このページの要点
- 申請書類の作成、入力、提出、代理申請、折衝をしないことを、行為を名指しして書く。名目(コンサルティング料、成功報酬)は問われない(行政書士法19条1項)。
- 「交付決定額」「営業日」「報酬予定額」を定義し、通知に記載された額か確定した額か、税込か税別かを明記する。
- 成功報酬の発生点(交付決定、入金、額の確定後)を一つに決め、取消し・返還のときの扱いを原因ごとに書く。
- キャンセル料の各段階の「完了」を書面の提出と承諾で特定し、不採択のときの次回公募の修正、制度変更・公募中止のときの精算も決める。
結論:補助金の支援契約は「しないこと」「報酬が生まれる時点」「結果が出なかったとき」の3点で組み立てる
補助金の申請を支援するコンサルティングは、成果が行政の審査に左右されるため、ほかのコンサルよりも契約書の出来が結果を分けます。事務所が見てきた書類では、論点は次の3つに集まっていました。
- 受託者が何をしないか。提出や代理申請をしないこと、申請書類を依頼者に代わって作らないこと。
- 報酬が生まれる時点。交付決定の通知か、補助金の入金か、額の確定のあとか。
- 結果が出なかったときの精算。不採択、公募の中止、制度の変更、依頼者側のキャンセル。
このページは、補助金の制度や公募要領を紹介するものではありません。補助金や助成金の要件・様式・加点項目といった手続の中身は、制度ごと、公募回ごとに変わるため扱いません。扱うのは、弁護士や行政書士などの資格を持たないコンサルタントが補助金の支援を引き受けるときに、契約で何を範囲の外に置き、報酬と精算をどう書くかという点です。素材は、事務所が点検した成功報酬型の基本契約(依頼者の骨子案に対して事務所が改訂したもの)、補助金の交付決定を成果の条件にした紹介報酬の契約、助成金の活用を伴う研修の契約などです。
成功報酬の書き方の一般論は成功報酬のページ、資格者の業務を範囲から外す考え方の一般論は業務範囲のページで扱っています。ここでは、補助金に固有の「交付決定」「入金」「不採択」「制度変更」に絞って説明します。
業務範囲:提出や代理申請をしないことを、体制として条文にする
補助金の支援で最初に決めるのは、申請書類の作成と提出を誰が行うかです。行政書士法は、行政書士または行政書士法人でない者が、他人の依頼を受け、報酬を得て、業として、官公署に提出する書類その他の権利義務・事実証明に関する書類を作成することを禁じています(同法19条1項、業務の内容は1条の3第1項)。違反した者には、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められています(21条の2)。
この制限は、2025年6月13日公布の改正(令和7年法律第65号)で、19条1項に「いかなる名目によるかを問わず」という文言が加わりました。2026年1月1日に施行されています。総務省が各都道府県知事あてに出した公布の通知(令和7年6月13日付総行行第282号)は、この改正を「業務の制限規定の趣旨の明確化」と整理し、あわせて、業務の制限に違反した場合などの両罰規定(23条の3)も整備されたと説明しています。報酬の名目を「コンサルティング料」や「成功報酬」としても、条文上、名目は問われないということです。
ただし、個々の補助金の申請書類が「官公署に提出する書類」に当たるのか、提出先の事務局が官公署に当たるのかといった判断は、制度ごと、書類ごとに分かれ得ます。契約書の側でこの判断に立ち入るのは得策ではありません。実務では、判断に立ち入らずに、「受託者は助言と草案の提示にとどまり、作成・提出・代理は申請者本人が行う」という線を、契約書の言葉と実際の作業の両方で引きます。契約書に「助言にとどまる」と書いても、実際に申請書を書いて渡していれば評価は実態で決まるため、条文と運用をそろえることが前提です。
事務所の改訂例 業務範囲の書き方(非士業のコンサルタントの成功報酬型の基本契約)
業務の特定
なぜ「作成支援」「整理サポート」のような語は、どこまでが受託者の仕事か境界が曖昧になる。点検の報告書でも、提出代行をしない旨を強調し、申請者本人が申請・提出する体制をさらに明確に条文化するよう指摘した。
役割分担
なぜ最終決定を申請者に置く条文であり、同時に、資料が出ないために業務が止まったときの責任の所在を決める条文でもある。
詳細の置き場所
なぜどこまでが支援範囲で、どこから追加業務かの判断を別紙に集めると、範囲外の作業が出たときの交渉の足場になる。
条文例業務範囲と、しないことの条文例(修正提案の形)
- 乙は、甲が実施を予定する事業に関し、事業計画書の草案の提示、経営・販路開拓に関する助言、及び関連資料の整理・収集の支援を行う。
- 乙は、甲の指示に基づき、助言及び草案の提示を行うにとどまり、甲に代わって、申請書類の作成、申請画面への入力、行政機関・公的団体その他の審査機関への提出、代理申請及び折衝を行わない。
- 前項に定める事項は、甲が自己の責任において行う。甲は、申請に用いるID及びパスワードを乙に預けない。
- 業務の詳細、納期、成果物の形式、確認及び修正の回数は、別紙に定める。別紙に定めのない作業は、追加業務として、書面(電子メールを含む。)による合意の後に着手する。
書き方の要点第2項は、行為を名指しして列挙する。入力、提出、折衝まで書くのは、「作成支援」と実際の作業の境目で、受託者が作業を引き受けてしまう場面を防ぐためです。第3項の「IDを預けない」は、申請者本人が入力・提出するという前提を、実際の運用に落とす条項です。
| 項目 | 契約での置き方 | 理由 |
|---|---|---|
| 申請書類の作成代行 | しない。草案と助言にとどめる | 19条1項の制限に触れないための線。名目は問われない |
| 申請画面への入力・提出・代理申請 | しない。申請者本人が行う | 入力や提出の担い手が誰かは、実態として審査される |
| 申請用のIDの預かり | 預からない | 預かると、本人の入力という前提が崩れる |
| 事務局や行政機関との折衝 | しない。問い合わせは申請者本人が行う | 代理行為と評価されるのを避ける |
| 採択・交付・金額の保証 | 保証しない。審査は行政側が行うと明記 | 結果は審査機関の判断であり、受託者は左右できない |
| 採択後の手続(実績報告・精算など) | 原則として範囲外。必要なら別の契約 | 本件の成功報酬と、後続の作業の報酬を混ぜない |
ヒヤリングの問い補助金の支援契約で、最初に確かめること
問申請書の入力と提出は、誰が、どの画面から行いますか
理由「本人が行う」と条文に書いても、運用が違えば意味がなくなる。依頼者の体制(担当者、権限、ID)を、契約の前に確かめる。
問申請様式の中に、支援者の名称や、支援に対して支払う額を記載する欄はありますか
理由制度によっては、そうした欄がある。契約書の報酬と申請書の記載が食い違わないようにするため、また、支援者としての関与が申請書に表れることを依頼者に伝えるために聞く。
問取引先や専門家に頼む書類(見積書、証明書類など)は、誰が手配しますか
理由手配は申請者本人が行う、と決めておく。受託者が代わりに依頼先へ連絡すると、代理と評価されやすい。
問同じ事業で、過去に別の支援者へ依頼したことはありますか
理由報酬の二重払いや、先行する契約の独占条項、書類の著作権との衝突を避けるため。
用語の定義:「交付決定額」「営業日」「報酬予定額」を先に固定する
依頼者の骨子案を点検した報告書は、条文の内容よりも先に、用語の定義がないことを指摘しました。成功報酬を「交付決定額の一定割合と定額の最低報酬の高い方」としていても、交付決定額が何を指すのか、いつの時点の額なのか、税込か税別か、営業日とは何かが書かれていなければ、算定の入口で争いになります。改訂では、独立した定義の条を新設しました。
| 用語 | 決めること | 決めないと起きること |
|---|---|---|
| 交付決定額 | 交付決定の通知に記載された額か、後に確定した額か。税込か税別か | 報酬の算定の基礎が二通りに読める |
| 営業日 | 銀行営業日とするのか、当事者が定める日とするのか | 「入金後10営業日以内」の期日がずれる |
| 報酬予定額 | キャンセル料の基準となる、報酬の見込額 | 確定した報酬額と混ざる |
| 成果物 | 草案、構成案、提案資料、報告書案など | どの書類が納品の対象かが争いになる |
| 事業報告完了日 | 別紙の最終マイルストーンを終えた日 | 契約の終期がいつか分からない |
定義語は、使う場面ごとに別の語にします。点検では、「報酬予定額」が、キャンセル料の基準としても、報酬の支払額としても使われている箇所に注意しました。確定前の見込額と、確定後の支払額が同じ語になっていると、どちらを指すのかが読み手の判断に委ねられます。成功報酬の確定額には「成功報酬額」、キャンセル料の基準には「報酬予定額」のように、場面で語を分けておきます。
もう一つ、「交付決定額」と最終的に受け取る額が同じとは限らない点に気をつけます。国の補助金等には「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」が適用され、交付の決定(6条)のあと、補助事業が完了すると実績報告(14条)が行われ、それを受けて交付すべき額が確定します(15条)。条件に違反した場合には、交付の決定が取り消され(17条)、すでに交付された補助金等の返還が命じられることもあります(18条)。地方公共団体や外郭団体の事業には、それぞれの要綱や規程があり、段階の名前も異なります。契約では、基準にする額を「交付決定の通知に記載された額」とするのか、「確定した額」とするのかを、定義に書いておきます。税込か税別かは、どちらかを明記します。
成功報酬の発生条件:交付決定か、入金か、額の確定のあとか
成功報酬型の補助金支援契約は、報酬の発生点を3つの型から選べます。点検した基本契約は、「資金交付を受け、入金が完了した場合にのみ報酬が発生する」と定め、金額は交付決定額の一定割合と最低報酬のいずれか高い方としていました。支払期日は、入金完了後の一定の営業日以内でした。
報酬の発生点の3つの型
交付決定の通知
紹介報酬の契約に多い
- 通知の受領という客観的な事実で決まる
- まだ入金されていない段階で報酬が確定する
- 後で決定が取り消されたときの扱いを別に書く必要がある
入金の完了
点検した基本契約の型
- 依頼者に資金が入ってから払うので、依頼者に受け入れられやすい
- 入金の時期は行政の手続に左右され、受託者は待つしかない
- 依頼者が入金の事実を伝えない場合に備え、報告義務を置く
額の確定のあとの入金
国の補助金等の流れに沿う型
- 確定した額で算定できるので、事後の差額精算が要らない
- 確定までの期間が長くなる
- 確定額が交付決定額を下回ったときの扱いが明らかになる
どの型でも、受託者の報告確認の方法(入金の通知、通帳の写しの提示など)を条文にしておくと、争いの入口が減ります。
点検では、「税込」という語の意味を明確にすること、交付決定額が確定する時点を明記することを提案しました。支払についても、遅延したときの遅延損害金の率、実費精算の手続(事前の承認、請求書の提出、支払期日)を条項にしておくことを勧めています。
条文例報酬の条文例(修正提案の形)
- 乙の成功報酬は、甲が本業務に関連する補助金その他の公的支援制度による資金の交付を受け、その入金を完了した場合にのみ発生する。
- 成功報酬の額は、交付決定の通知に記載された額(税込・税別のいずれであるかを明記する。)に、〇%を乗じた額とする。ただし、その額が最低報酬額に満たないときは、最低報酬額とする。
- 甲は、資金の入金を完了した日から〇営業日以内に、入金の事実を乙に書面(電子メールを含む。)で通知し、乙の請求書に基づき、成功報酬を支払う。
- 審査の結果により資金の交付が行われなかったときは、甲は乙に対して成功報酬の支払義務を負わない。ただし、甲が正当な理由なく交付決定を辞退したときは、この限りでない。
書き方の要点第4項のただし書は、依頼者が、報酬を払いたくないために交付決定を辞退する場面に備えるものです。民法130条1項は、条件が成就すると不利益を受ける者が故意にその成就を妨げたとき、相手方は条件が成就したものとみなすことができると定めています。これを契約書の言葉で明らかにしておけば、辞退が妨害に当たるかを争う手間が減ります。
もう一つの論点は、報酬を受け取ったあとに交付決定が取り消され、補助金の返還を命じられたときです。取消しの原因が依頼者の目的外使用や条件違反であれば、受託者の報酬を戻させる理由はありません。一方、受託者が提供した資料に誤りがあった場合を含めて、受託者の関与に原因があるときは、依頼者が受託者へ報酬の返還を求めてくるおそれがあります。条文では、「取消しの原因が甲にあるときは、受領済みの報酬を返還しない。原因が乙の故意又は重過失によるときは、返還された補助金の額を上限として協議する」のように、原因ごとに書き分けておきます。
進捗段階のキャンセル料と、不採択のときの次回公募
成功報酬型は、結果が出なければ受託者の報酬がゼロになります。そのため、依頼者が途中で契約をやめる場面に備えたキャンセル料が、受託者の損失を抑える主な手当てになります。準委任契約では、各当事者がいつでも契約を解除でき(民法651条1項)、相手方に不利な時期に解除したときは損害を賠償します(同条2項)。キャンセル料の条項は、この賠償額を、あらかじめ式にして予定しておくものです(民法420条)。依頼者が事業者であることが前提で、個人や開業前の相手方には別の配慮が要ります(開業前の個人とのコンサル契約のページ)。
キャンセル料の段階(点検した基本契約の型)
- ヒアリングから骨子案の提示まで報酬予定額の30%。完了は「乙が骨子案を提示し、甲が承諾した時点」とする。
- 計画書のドラフトの提出後報酬予定額の70%。
- 提出用資料の作成完了後報酬予定額の100%。審査の結果を待たずに、作業の完了で区切る。
依頼者の骨子案では、各段階の表現が「計画骨子作成完了」「提出用資料作成完了後(審査中含む)」のように曖昧でした。どの書面の提出と、誰のどの行為で「完了」とするかを書かないと、段階の判断で争いになります。
改訂前後の違いは3つです。第一に、最初の段階の完了を、受託者が骨子案を提示し、依頼者が書面(電子メールを含む)で承諾した時点にしました。第二に、「審査中を含む」で100%とする書き方をやめ、「提出用資料の作成完了後」に整理しました。審査の最中に、審査通過を待たず全額を請求できるという定めは、依頼者にとって重く、受け入れられにくいからです。審査通過を条件にする、あるいは「作成完了時点」と「審査通過」の二段階にするという選択肢も検討できます。第三に、解除の通知を、書面(電子メールを含む)で、希望日の30日前までに行うことにしました。
受託者の責めに帰すべき事由で業務ができなくなった場合は、キャンセル料を請求しないというただし書きも置いています。キャンセル料が発生したあとの清算(すでに支出した実費、作業中の成果物の扱い)も、補足の条項で決めておくのが望ましいとされます。
不採択のとき、次回の公募に向けた修正をどう扱うか
契約に含める
同じ報酬の範囲内で修正を続ける
- 依頼者に分かりやすい
- 修正に上限がないと、受託者の負担が際限なく増える
- 「次回公募の締切まで」「回数の上限」を定める
追加業務にする
別の見積りと書面の合意で着手する
- 作業量に見合う報酬を得られる
- 依頼者から見ると、不採択の上に費用が増える
- 追加報酬の算定式を別紙に置く
新しい契約にする
公募回ごとに契約を結び直す
- 契約と報酬が回ごとに閉じる
- 更新の手間が増える
- 旧契約の秘密保持や著作権の条項を引き継ぐ
どれを選ぶにしても、修正の回数と期限、不採択のときに追加の報酬を求めるかどうかを、契約の本文か別紙に書いておきます。
制度の変更・公募の中止、免責、計画書の著作権
補助金は、公募要領の改訂、要件の変更、予算の消化による受付の終了、制度そのものの廃止といった、受託者にも依頼者にも左右できない事情で内容が変わります。点検では、「不可抗力、制度変更、法令改正、公的支援制度の廃止等、乙の責めに帰さない事由により業務遂行が困難となった場合、甲乙は誠意をもって協議のうえ契約内容を変更または終了できる」という条項を置くよう提案しました。契約を終えるときの報酬は、「発生しない」ことを前提に、作業に要した実費の精算だけを決めておきます。
事務所の改訂例 免責の書き方(成功報酬型の基本契約)
免責の範囲
なぜ準委任の受託者は善管注意義務を負う(民法644条)。「一切」の免責は、受託者に故意や重過失があるときまで免れるように読め、条項全体の効力が問題になる。
損害の範囲
なぜ範囲を式にしておけば、予期しない額の請求を抑えられる。最後の一文が、条項全体が無効と判断されるのを避ける役目を持つ。
責任の上限の考え方は成果を保証しない条項のページに譲ります。事業者どうしの契約には消費者契約法は原則として及びませんが、それは「故意・重過失まで免責してよい」という意味ではありません。民法の一般原則(信義則や公序良俗)の下で、効力が争われる余地が残るためです。
計画書の著作権は、受託者に留保し、依頼者には利用を許諾する型が多く見られます。点検した基本契約も、著作権は受託者に帰属し、依頼者は本事業の実施と関連する活動の範囲で使えるとしていました。改訂では、利用の許諾を「非独占的、譲渡不可、改変不可」とし、第三者への提供・公表・改変には受託者の事前承諾を要するとして、受託者のテンプレートやノウハウを依頼者が流用・販売・再利用しないことも書き加えました。受託者が著作者人格権を行使しない旨も入れています。
ここで気をつけたいのは、「改変不可」と書いたままでは、依頼者が申請画面に計画書の内容を入力し、申請に合わせて文章を修正する行為ができなくなる点です。申請者本人が入力・提出する体制を前提にするなら、許諾の範囲には、申請とその後の手続に必要な範囲での転記・修正・提出を含めます。そのうえで、第三者への公開や、ほかの申請への使い回しは受託者の承諾を要する、と書き分けます。利用許諾の発生と停止の時点、契約の目的との整合は成果物・知的財産のページで扱っています。秘密保持は、存続期間を終了後3年のように特定し、返還・消去と、法令や行政機関の要請による開示の例外を置いておきます(秘密保持・個人情報・生成AIのページ)。
周辺の契約:交付決定連動の紹介報酬と、助成金を前提とする研修
補助金を支援する会社が、顧客を紹介する者に報酬を払う契約があります。事務所が点検した契約は、紹介された顧客が支援を受けて補助金の「交付決定」を受けたときだけ紹介報酬が発生する型でした。ここでの鍵は、交付決定の定義です。「顧客が国、地方公共団体その他の公的機関から、補助金またはこれに類する金銭的支援について、正式な交付決定通知を受領した状態」と定義し、報酬額は補助金の区分ごとの別紙の報酬表に委ねていました。初版には別紙がなく、改訂で報酬表を新設しています。
流れは、紹介、交付決定、報酬明細の通知、異議の期間、請求と支払の順です。確定の手続(明細の通知から一定の営業日以内に異議がなければ確定する、など)は、紹介報酬一般の書き方として成功報酬のページにまとめています。ここでは、補助金に固有の論点である「交付決定」の定義に絞ります。
気をつけたい点は2つです。第一に、報酬表にない補助金について「支援会社の判断で相当額を定める」とする書き方は、紹介者から見て報酬が一方的に決まる余地があります。第二に、紹介者の説明です。紹介の際に、受給の見込みを誇大に伝えないこと、自分が申請の代行者であるかのように説明しないことを、紹介者の義務として書いておくと安全です。
もう一つの周辺の契約は、助成金の活用を前提にした研修です。ある研修会社の契約は、研修の受講料と、助成金の活用支援の報酬を分けて定めていました。活用支援の範囲は、一般的な情報の提供、申請準備のための資料の整理、申請資料への助言・確認・添削、進行管理に限り、申請の代理、行政機関への提出、折衝は行わないと明記しています。申請書類の最終的な作成、提出、行政機関への対応は、依頼者または依頼者が別に委任した者が自己の責任で行う、という置き方です。助成金の手続の内容そのものは、この契約の外に置かれています。
| 論点 | 書き方 | 狙い |
|---|---|---|
| 受給の保証 | 受給、金額、時期、審査通過を保証しない | 結果が行政の判断に委ねられることを明確にする |
| 不支給・減額・返還 | 要件の不備、出席・訓練記録の不備、協力義務違反、証憑の保存義務違反など、原因ごとに受託者の責任を負わない場合を列挙する | 原因が依頼者側にある場面を、あらかじめ整理しておく |
| 報酬の発生点 | 支給申請書の提出の時点で発生し、支給の有無にかかわらず支払う | 結果に連動させない代わりに、受講料と分けて額を明確にする |
| 不正受給の禁止 | 虚偽申請、架空受講、受講実態の偽装を禁止し、違反に違約金を定める | 受託者が不正に巻き込まれないための歯止め |
| 中止・辞退 | 着手後に中止した場合は、発生済みの報酬と提携先の費用を支払う | 着手後の作業の損失を依頼者に残さない |
成功報酬型と、申請時点で報酬が確定する型は、依頼者の負担の感じ方が大きく異なります。契約の目的と、依頼者の交渉力を踏まえて選びます。
締結前に確かめること
- 申請書類の作成、入力、提出、折衝を受託者がしない、と条文に書いたか。IDを預からないか。
- 交付決定額の定義に、通知に記載された額か確定した額か、税込か税別かを書いたか。
- 報酬の発生点(交付決定、入金、額の確定)を一つに決め、支払期日と営業日の意味を定義したか。
- 取消し・返還が命じられたときの報酬の扱いを、原因ごとに書いたか。
- キャンセル料の各段階の「完了」を、書面の提出と承諾で特定したか。
- 不採択のときの次回公募に向けた修正を、契約に含めるか、追加業務にするかを決めたか。
- 計画書の利用許諾に、申請に必要な転記・修正を含めたか。
起きがちなこと
補助金の支援契約で起きがちなこと
- 「関連書類の作成支援」と書いたままにして、実際には申請書の本文を書いて渡し、提出まで手伝っていた。契約書上は助言のはずが、実態が範囲を超えていた。
- 交付決定額の定義がなく、交付決定の通知の額と、後に確定した額のどちらで報酬を計算するかで争いになった。
- 審査中の段階で解除されたときに、報酬予定額の100%を請求する定めが、依頼者に拒まれて交渉が止まった。
- 制度の改訂で要件が変わったのに、契約に変更や終了の定めがなく、受託者が報酬の出ない作業を続けた。
- 計画書の利用を「改変不可」としたため、依頼者が申請画面に合わせて文章を直せず、受託者に修正を求める依頼が続いた。
- 補助金を前提にした研修で、不支給のときの受講料や支援報酬の扱いを書いておらず、依頼者が全額の返金を求めた。
よくあるご質問
補助金の事業計画書を作るだけなら、行政書士法に触れませんか。
計画書が「官公署に提出する書類」に当たるか、提出先がどこかによって判断が分かれ得ます。行政書士法19条1項は、他人の依頼を受け、いかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として、官公署に提出する書類の作成などを行うことを、行政書士または行政書士法人でない者に禁じています。契約書では、この判断に立ち入らず、受託者は助言と草案の提示にとどまり、作成・入力・提出・代理は申請者本人が行うと書き、実際の作業もその範囲にそろえます。
成功報酬は、交付決定の時点と入金の時点のどちらで発生させるべきですか。
依頼者に受け入れられやすいのは入金の時点で、受託者にとっては交付決定の時点が確実です。国の補助金等では、交付決定のあとに実績報告と額の確定があり、決定が取り消されたり返還が命じられたりすることもあります。どの時点を選んでも、基準にする額(通知に記載された額か確定した額か)と、取消し・返還のときの扱いを併せて書く必要があります。
不採択だったとき、報酬とキャンセル料はどうなりますか。
成功報酬型では、資金の交付がなければ報酬は発生しない、と書きます。キャンセル料は、依頼者が途中で解除したときのもので、不採択とは別の話です。次回の公募に向けた修正を契約に含めるか、追加業務にするか、新しい契約にするかを、あらかじめ決めておきます。
公募が中止になったり、制度が変わったりしたときは、どうしますか。
受託者の責めに帰さない事由として、協議のうえで契約を変更または終了できる条項を置きます。報酬は発生しない前提で、作業に要した実費の精算だけを決めておきます。
計画書の著作権は、依頼者に渡すべきですか。
受託者に留保し、依頼者に利用を許諾する型が多く見られます。その場合、申請とその後の手続に必要な転記・修正の範囲は許諾に含めます。「改変不可」とだけ書くと、依頼者が申請画面に合わせて文章を直すこともできなくなります。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、業務の内容や当事者の属性、契約に至った経緯によって異なることがあります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきたコンサルティング契約書、顧問契約書、業務委託契約書、成果報酬・収益分配型の契約書、業務提携・共同事業の契約書、秘密保持契約書、PoCの覚書、各種の覚書、レビュー報告書、ヒヤリングシートなどを、個別の依頼者・相手方が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています(最終確認日:2026年10月20日)。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会 / 公正取引委員会 / 経済産業省