基本合意書(LOI・MOU):拘束力の有無を条ごとに書き、不成立のときの後始末を決める

基本合意書のトラブルの芽は、名前の軽さと、中身の重さのずれにあります。どの条項に拘束力があり、どの条項にないかを書かないと、「誠実に協議する」の一文が責任の根拠として読まれます。

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独占交渉の条項に、期間も違反のときの効果も書かれていなければ、禁止だけが書かれた状態で、守らせる手段がありません。

このページの要点

  • 拘束力のある条項を番号で列挙し、それ以外は拘束力を有しないと書く。最終契約の締結を義務付けないことも書く。
  • 独占交渉は期間と違反の効果を、価格の意向はデューデリジェンスの結果を減額に反映する基準と方法を、あわせて書く。
  • 表明保証は補償とセットで設計し、保証債務の消滅のようなクロージングの条件は、期限、方法、未達のときの効果まで書く。
  • 秘密表示のない資料の扱いと、不成立のときの費用、資料の返還・消去、秘密保持・競業の存続期間を決める。

結論:基本合意書は「どの条項に拘束力があり、どの条項にないか」を条ごとに書く文書

基本合意書(LOI、MOUなどとも呼ばれます)は、最終の契約を結ぶ前に、取引の大枠について当事者が確認する書面です。株式や事業を譲り受ける取引、共同で製品を開発する取引、専門家が事業の立上げに段階的に参画する取引などで使われます。名前は「基本合意」でも、中身が最終契約に近いものもあれば、交渉の枠組みを示すだけのものもあります。トラブルの芽は、名前の軽さと、中身の重さのずれにあります。

事務所が見てきた基本合意書の論点は、次の3つに集まりました。

  1. 拘束力のある条項とない条項が区別されているか。区別されていないと、「誠実に協議する」という一文が、交渉を打ち切ったときの責任の根拠として読まれるおそれがある。
  2. 独占交渉、調査への協力、価格の調整のような、交渉の段階の条項に、実効性を担保する仕組みがあるか。
  3. 最終契約に至らなかったとき、費用、資料の返還、秘密保持、競業をどうするか。

このページでは、株式の譲渡、共同開発と資金提供、専門家の段階的な参画という3つの場面の基本合意書を取り上げます。株式譲渡の会社法上の手続の詳細には踏み込みません。秘密保持契約の書き方はNDAのページ、PoCや付随の覚書の優先関係はPoC・覚書のページで扱っています。

名前ではなく中身:基本合意書の3つの型

「基本合意書」「LOI」「MOU」「覚書」の呼び名に、法律上の決まった意味はありません。拘束力は、書かれた内容と、当事者の意思で決まります。事務所が点検した書面は、中身から見ると、次の3つの型に分かれます。

基本合意書の3つの型

交渉の枠組みだけの型

最終契約が前提

  • 価格や条件は「意向」にとどめる
  • 拘束力があるのは、独占交渉、秘密保持、費用負担など一部の条項だけ
  • 最終契約を結ぶ義務は負わない

交渉の段階を拘束する型

株式譲渡の基本合意書の例

  • 独占交渉、調査への協力、価値を維持する行為制限を課す
  • 価格の調整や補償の設計が最終契約に先送りされがち
  • 拘束する条項が多いのに、切り分けの文言がない例がある

実質は本契約の型

共同開発や参画の基本合意書の例

  • 資金の提供、利益の分配、競業の禁止、清算まで定める
  • 有効期間が、事業の終わりまで続く
  • 名前が基本合意でも、拘束力のある契約として扱われやすい

ある共同開発の基本合意書は、資金の段階的な提供、使途の限定、利益に連動した支払、競業の禁止、M&Aのときの清算までを定め、有効期間も支払期間が満了するまでとしていました。こうなると、名前は基本合意でも、実質は最終の契約であり、「後で本契約を結ぶから軽く書く」という前提は成り立ちません。

最初に決めるのは、その書面を、どの型として使うかです。最終契約を結ぶ前提で交渉の枠組みを確認するだけなら第1の型で足ります。第3の型になるなら、基本合意書の段階で、最終契約と同じ水準の吟味が必要になります。呼び名で型を決めず、内容から型を判定して、条文の重さをそろえます。

拘束力の書き分け:誠実な協議の一文が、責任の根拠になることがある

株式譲渡の基本合意書を点検した報告書は、最初の条文(基本合意・誠実交渉義務)に、実務上の大きなリスクがあると指摘しました。「誠実に努力する」という文言は、民法1条2項の信義則(権利の行使と義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない)と結び付き、単なる努力義務にとどまらず、一定の場合には、交渉の過程での義務違反として損害賠償責任の根拠になる余地があるためです。価格や主要な条件について一定の合意が形成されていると、当事者の合理的な期待が高まり、一方的な交渉からの離脱が「不当」と評価される余地が生じます。

問題は、拘束条項と非拘束条項の切り分けが、書面に書かれていなかったことでした。「最終契約は強制されない」としながら、独占交渉や行為の制限は厳格に課されているため、書面全体でどこまでが法的義務なのかが分かりません。この構造は、交渉が決裂したときに「どこまで責任があるのか」という争いを招く典型で、買う側にとっても、不要な法的リスクになります。

条文例拘束力の切り分けの条文例(修正提案の形)

  1. 本合意は、第〇条(独占交渉)、第〇条(秘密保持)、第〇条(費用負担)、第〇条(有効期間)、第〇条(準拠法及び合意管轄)及び本条に限り、法的拘束力を有する。
  2. 前項に定める条項以外の本合意の各条項は、本合意締結時点における当事者の意向を確認するものであり、法的拘束力を有しない。
  3. 各当事者は、最終契約が締結されるまでの間、最終契約の締結を義務付けられない。最終契約を締結しなかったことは、第1項に定める条項に違反した場合を除き、相手方に対する責任の原因とならない。
  4. 価格その他の取引条件は、デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終契約において、当事者が協議のうえ定める。

書き方の要点第1項は、拘束する条を番号で列挙します。「重要な条項は拘束する」のように抽象的に書くと、切り分けの意味がなくなります。第3項のただし書は、拘束力のある条項に違反したときの責任まで免れるように読まれないための歯止めです。

切り分けを書いても、運用が条文に反していれば意味がなくなります。基本合意書の締結後に、価格や譲渡の時期について、一方が「合意した」と受け取れるやり取りを重ねると、拘束力のない条項が、事実上、期待の根拠になります。点検の問いは、「この条項を理由に交渉を打ち切ったとして、相手方に何を言われるか」です。

ヒヤリングの問い基本合意書を結ぶ前の問い

  • 問最終契約は、誰が、いつまでに結ぶ予定ですか

    理由予定の時期が基本合意書に書かれていないと、独占交渉の期間や、有効期間を決められない。期限がない拘束は、売り手にも買い手にも負担になる。

  • 問基本合意書の段階で、拘束したい条項はどれですか

    理由拘束したいものを先に決め、残りを非拘束にする。独占交渉、秘密保持、費用負担、有効期間、準拠法・管轄が典型。

  • 問価格は、金額で書きますか、算定式で書きますか、意向にとどめますか

    理由意向にとどめるなら、調整の基準を別に書く。金額で書くなら、桁と単位の誤記がないかを最初に確かめる。

  • 問金融機関からの融資など、第三者の判断が成立の条件になっていますか

    理由条件にするなら、条件の内容、期限、不成立のときの費用と資料の扱いを書く。

金額の表記は、最初に確かめる点です。事務所が確認した事業譲渡の基本合意書には、桁や単位の表記が実際の取引と一致しない可能性が高い箇所があり、確認結果の報告で、特に確認が必要な重要事項の筆頭に「先方に確認して正しい表記に修正する」点として挙げました。基本合意書では、数字の誤記が最終契約まで残ることが少なくありません。

もう一つ、事業譲渡の基本合意書の特約には、「金融機関からの融資が成立した場合に契約が成立する」という定めがありました。民法127条1項は、停止条件付きの法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずると定めています。融資の成立を条件にするなら、融資の申込みをいつまでに行うか、申込みの努力義務を負う当事者はどちらか、不成立のときに誰がどの費用を負担するか、までを書きます。

独占交渉・調査協力・価格の調整:「拘束はするが担保がない」条項を直す

株式譲渡の基本合意書の点検で、報告書が最も多く指摘したのは、交渉の段階を拘束する条項に、その実効性や後段の設計がない点でした。主な指摘と補い方を並べます。

株式譲渡の基本合意書の点検で指摘した点と、補い方
条項指摘補い方
価格・取引内容価格が「取得意向」にとどまり、デューデリジェンスの結果による減額の基準や方法がない。価格とリスクの連動が設計されていない減額が生じる場合、減額の程度、判断の基準を条文にする。金額の閾値、計算の方法を決める
保証債務保証債務を「速やかに消滅」させるとあるだけで、期限、方法、できなかったときの効果がない。クロージングの条件として機能しない期限と方法を書き、消滅しなかったときは、クロージングの条件が未達として扱うと書く
表明保証範囲が不十分。補償条項と連動していない対象事業に応じた項目を増やし、違反のときの補償を、期間、範囲、金額の上限とセットで書く
デューデリジェンス調査する権利だけで、結果を価格や解除に反映する設計がない発見された事実と契約上の対応(減額、解除、表明保証での処理)を連動させる
善管注意義務(価値の維持)「財産状態ならびに損益状況を大幅に変化させない」の「大幅」が未定義数値の基準を置くか、通常の業務の範囲内は許容する旨を書く
独占交渉違反したときの効果がなく、期間や終了条件も不明期間、対象、違反時の違約金・解除・損害賠償のいずれかを書く
解除・価格修正「重大な瑕疵」が未定義で、減額の計算方法もない重大性の基準を数値や類型で定め、減額の計算方法を書く
競業避止・引継ぎ競業避止がなく、引継ぎ協力の内容が抽象的期間、範囲、引継ぎの具体的な内容と、違反の責任を書く

報告書の総括は、「交渉をコントロールする機能は有しているが、取引リスクをコントロールする機能が欠落している」というものでした。

独占交渉の条項は、売り手が他の買い手候補と交渉することを禁じるもので、買う側には交渉の安定をもたらします。ところが、違反したときの効果が書かれていないと、売り手が第三者に情報を提供し、交渉していても、具体的な損害の立証が難しく、請求は容易ではありません。「書いてはあるが守らせる手段がない」状態です。期間の定めがなく、買う側が積極的に交渉を進めないまま拘束が続くと、売り手の協力姿勢が下がり、取引が成立しにくくなる逆効果もあります。独占交渉は、期間を決め、違反のときの効果を決めて、はじめて拘束条項として機能します。

価格については、「意向」を示す形でも構いませんが、デューデリジェンスの結果を、減額の基準にどう反映するかを書いておきます。調べて問題が見つかっても、売り手が「その程度では価格は変えない」と拒めば、法的な根拠のない交渉に戻ってしまいます。これを報告書は「調査の無力化」と呼びました。

表明保証は、補償の条項と対で設計します。許認可に基づく事業(福祉や介護のように、事業の指定を受けて報酬を請求する事業)では、事業指定の有効性、行政処分や監査の履歴、報酬請求の適法性(返還のリスク)、労務のコンプライアンス、個人情報の保護が、典型的な項目になります。保証があっても、どの期間、どの範囲で、いくらまで補償されるかが書かれていなければ、回収できません。

保証債務の扱いも、基本合意書の段階で触れておく価値があります。売り手の個人保証のような保証債務を消滅させることを、クロージングの条件にするなら、いつまでに、誰が、どの手続で消滅させるのかを書きます。「速やかに消滅させる」だけでは、条件が満たされたのかを判断できません。

秘密保持との関係:先に結ぶNDAと、秘密表示のない資料

基本合意書の前後に、秘密保持契約(NDA)が結ばれます。事務所が確認した事業譲渡の例では、秘密情報等保持契約と基本合意書の2本が、交渉の初期に組で使われていました。そのNDAでは、資料に「秘密」「機密」「Confidential」などの表示があるか、口頭で秘密であることを伝えて後日文書で内容を確認した場合だけを、秘密情報として扱う定めでした。確認結果の報告は、この点について、秘密表示のない資料は契約上の秘密情報として扱われない可能性があると説明し、重要な資料を渡すときは、表示を付けておくことを勧めました。

この点は、不正競争防止法の面からも意味があります。同法で保護される「営業秘密」は、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報であって、公然と知られていないものです(2条6項)。表示を付け、アクセスを限る運用は、情報を秘密として管理していた証拠にもなります。

基本合意書の中の秘密保持と、別に結ぶNDAの関係
論点決めること理由
対象の情報NDAと同じ定義にそろえるか、基本合意書で別に定義するか二つの文書の定義が違うと、同じ資料が一方では秘密、他方では秘密でなくなる
優先関係矛盾したときは、より厳格な定めを適用するのか、NDAを優先するのかどちらが効くかが書かれていないと、不成立のときに争いになる
秘密表示のない資料表示がなくても、性質上秘密と認められる情報は対象とするか表示漏れだけで保護から外れるのを避ける
返還と消去不成立のとき、資料を返還・消去する期限と、保存が必要な例外電子データの複製やバックアップが残る
費用調査や交渉の費用を各自が負担するか交渉が不成立でも、費用の請求が残らないようにする

NDAとの優先関係の一般的な書き方は秘密保持・個人情報・生成AIのページにあります。

共同開発・資金提供と、段階的な参画の基本合意

共同開発と資金提供:実質が本契約になる型の見分け方

共同で製品を開発し、一方が開発資金を出す基本合意書は、実質が本契約になりやすい型です。事務所が見た書面は、専門的な知見を持つ会社と、製品の製造と販売を行う会社が共同で製品を開発し、前者が事業開発資金を段階的に提供する内容でした(定めの範囲は、前の節の表の最後の例のとおりです)。

ここまで定めると、名前は基本合意でも、拘束力のある契約として扱われやすくなります。基本合意書の段階だからこそ、「いつまで」「どこまで」「いくらまで」の歯止め(支払期間と累計額の上限、独占の許諾が事業の停滞で失われる条件、清算額の二重の上限と優先関係)を先に書いておくと、最終契約の交渉の前提が固まります。事務所の改訂でも、この方向の修正が中心でした。資金の段階払いと貸付への切替え、共有する権利の扱い、開発が止まったときの清算は共同開発契約のページ、利益や売上を分ける契約の一般論はレベニューシェアのページ、権利を共有することと収益を分けることの違いは業務提携のページで扱っています。

専門家が段階的に参画する基本合意:次のフェーズを義務付けないまま、守るもの

新しい事業の立上げに、専門家が数年にわたって、段階的に参画する基本合意書もあります。事務所が見た書面は、新しい製造拠点の立上げに、技術を持つ専門家が中長期で参画するもので、初期設計、試験と準備、本格稼働後の運営という3つの段階を想定していました。設計の難しさは、「次のフェーズの契約は義務付けないが、中長期の参画を前提に始めたことは尊重する」という、二つの要請を同時に満たす点にあります。

事務所の改訂例 専門家の段階的な参画の基本合意書の改訂

参画条件の変更・中止

改訂前当初の版:事業側が自己の都合で内容を大きく変えたり、参画を終了しようとするときは、理由を説明し、誠実に協議する。中止の場合は3か月前に通知し、終了補償その他の措置を協議する
改訂後改訂後:事業側の都合で中止、延期、縮小、参画条件の実質的変更をするときは、原則として3か月前までに通知する。専門家は、事業側の責めに帰すべき事由で継続が困難になったときは、参画条件の見直しを求め、又は参画を終了できる。資源を確保していたときは、合理的な終了補償を請求でき、事業側はこれを支払う

なぜ協議の義務にとどめると、補償の話し合いが始まらない。補償を請求できる権利として書き、額は参画期間、予定された契約期間、報酬水準、確保した資源などを総合して定める。純粋な自己都合の終了には適用しない。

次のフェーズの契約

改訂前当初の版:各条に分かれて、協議や尊重の定めが重なっていた
改訂後改訂後:条を整理し、次のフェーズの業務内容、稼働割合、契約形態、報酬は、フェーズ開始前に個別契約で定める。基本合意書は、特定の個別契約や条件を受け入れる義務を課さないと、関係する条ごとに繰り返し明記した

なぜ「義務付けない」ことと「前提を尊重する」ことを、条ごとに分けて書く。後者を協議の手続(終了予定日の約2か月前に開始)で具体化する。

秘密保持の存続

改訂前当初の版:基本合意の終了後5年間
改訂後改訂後:終了後2年間

なぜ存続の期間は、情報の性質に合わせて決める。短くした分は、競業等の条で営業秘密の利用を制限する別の歯止めに支えられている。

他の仕事との関係も、基本合意書で整理しておきます。専門家は独立した事業者として参画し、専属の義務を負わない代わりに、委託者の営業秘密を使って競合する事業に関与することだけを禁じる、という書き分けが基本です。成果物については、新たに創作されたものを委託者に帰属させつつ、専門家が従前から持つ知識や技術は専門家に残します。この書き分けは、月額で関わる顧問型の契約と共通する部分が多く、技術顧問契約のページで、事務所の書類の記載とあわせて説明しています。

最終契約に至らなかったとき:費用、資料、競業、残る条項

基本合意書は、最終契約が成立しなかったときのためにも書かれます。この場面で何が残るかを、条文で決めておきます。

不成立のときに決めておくこと

  • 有効期間と、期間満了の効果。独占交渉は、期間が満了すれば当然に終了すると書く。
  • 調査、専門家、交渉に要した費用は、各自が負担すると書く。相手方への請求を残さない。
  • 相手方から受け取った資料の返還・消去の期限。電子データの複製、バックアップの扱い。
  • 秘密保持と、情報を使って競合しないという義務の存続期間。
  • 不成立の通知の方法。口頭の通知は残らないため、書面(電子メールを含む)とする。
  • 拘束力のある条項に違反した場合の責任。これは不成立とは別に残る。

基本合意書の存続条項は、拘束力のある条項と一致させます。拘束力のない条項を存続させる、と書くと、切り分けが崩れます。有効期間を、最終契約が成立するまで、または一定の日までのいずれか早い日とし、存続する条項を番号で列挙するのが安全です。

起きがちなこと

基本合意書で起きがちなこと

  • 「誠実に協議する」と書いただけで、拘束力の有無を書かなかった。交渉を打ち切ったとき、相手方から義務違反を主張された。
  • 独占交渉の条項に期間も違反の効果もなく、売り手が他の候補と交渉していても止められなかった。
  • 価格を「意向」と書き、デューデリジェンスで問題が見つかっても、減額の基準がなく、交渉が行き詰まった。
  • 保証債務の消滅を「速やかに」とだけ書いたため、クロージングの条件が満たされたのか判断できなかった。
  • 資料に秘密の表示がなく、秘密保持契約の対象から外れる可能性が残った。
  • 基本合意の名前で、資金の提供、利益の分配、競業の禁止を定めたため、実質は本契約になり、見直しの余地がなくなった。
  • 金額の桁や単位の誤記に気づかないまま署名した。

よくあるご質問

基本合意書には、法的拘束力がありますか。

書き方で決まります。呼び名は関係ありません。独占交渉、秘密保持、費用負担、有効期間、準拠法・管轄のような条だけを番号で挙げて拘束力を認め、そのほかは拘束力を有しないと書くのが基本の形です。切り分けを書かないと、「誠実に協議する」の一文が、信義則(民法1条2項)と結び付いて、交渉を打ち切ったときの責任の根拠として読まれる余地が生じます。

独占交渉の条項は、何を決めておくべきですか。

期間、対象(他の候補との接触、情報の提供、交渉のどこまでを禁じるか)、終了の条件、違反のときの効果(違約金、解除、損害賠償)です。効果がないと、損害の立証が難しく、禁止だけが書かれた状態になります。

価格は、基本合意書でどこまで決めればよいですか。

意向として示すだけでも構いません。ただし、デューデリジェンスの結果を、減額に反映する基準と方法を書いておきます。金額を書く場合は、桁と単位の誤記がないかを最初に確かめます。

秘密の表示がない資料は、秘密保持の対象になりますか。

秘密保持契約で、表示がある情報や、口頭で秘密と伝えて後日文書で確認した情報に限っている場合は、表示のない資料が対象から外れる可能性があります。重要な資料には表示を付け、性質上秘密と認められる情報も対象に含める定義にするのが安全です。

最終契約に至らなかったときの費用は、どう決めますか。

調査や交渉の費用は各自が負担すると書き、相手方への請求を残さないのが一般的です。資料の返還・消去の期限と、秘密保持・競業の義務が続く期間もあわせて決めます。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、業務の内容や当事者の属性、契約に至った経緯によって異なることがあります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきたコンサルティング契約書、顧問契約書、業務委託契約書、成果報酬・収益分配型の契約書、業務提携・共同事業の契約書、秘密保持契約書、PoCの覚書、各種の覚書、レビュー報告書、ヒヤリングシートなどを、個別の依頼者・相手方が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています(最終確認日:2026年10月20日)。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会 / 公正取引委員会 / 経済産業省

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