このページの要点
- 保証は、対象、発動の要件、失う手続、救済の内容と計算の4つの部品に分けて書く。事業者間では消費者契約法は原則使えない。
- 準委任の枠を保つため、保証を「結果の約束」ではなく「完了するまで追加報酬なしで続ける」などの措置として書く方法がある。
- 否認事由は具体的な違反に限り、通知と是正の期間を置く。失権は通知と14日などの是正を経て、一定回数に達したときに限る二段型にする。
- 無償の延長と自動更新を重ねない。返金は基準、期間、算式、上限、時期、相殺を書き、営業資料の説明と契約書の条件を一致させる。
結論:保証は「何を約束するか」「いつ発動するか」「どうすれば失うか」「いくら払うか」の4点で書く
コンサルや構築支援の営業では、「3か月で仕組みが完成しなければ完成するまで無料で続けます」「初めての成約が出なければ2か月延長します」「成果が出なければ半額を返金します」といった保証が、申込みを後押しする材料として使われます。受託者の側から見れば、保証は契約を取りやすくする代わりに、思わぬ形で請求されたり、保証を巡って言い争いになったりする入口でもあります。依頼する側から見れば、保証が付いているから安心と思って契約したのに、条件が厳しすぎて一度も発動しない、という事態が起こりえます。
このページで扱うのは、事業者どうしの契約で、結果に連動した保証を約束する場合です。結果を保証しないことを書く条項は成果を保証しない条項のページで説明しているので、ここでは反対に、保証を約束すると決めたときに、その保証を契約書の中でどう組み立てるかに絞ります。保証は次の4つの部品に分けて書くと、後から読み返しても、どこが約束でどこが条件なのかが分かります。
- 対象:何の結果を保証するのか(構築の完了、最初の成約、紹介の件数、利益の額など)。保証しないものは何か。
- 発動の要件:保証を受けるために、依頼する側が何をしている必要があるのか。数字や行為は、読む人によって解釈が分かれない形で書く。
- 保証を失う手続:要件を満たさなかったとき、いきなり権利がなくなるのか、通知と是正の機会があるのか。
- 救済の内容と計算:保証が発動したとき、続きの業務をただで行うのか、金額を返すのか。返すなら計算式と上限は何か。
事業者どうしの契約では、消費者契約法は原則として当てはまりません。同法でいう「消費者」は個人であって、事業として、または事業のために契約の当事者となる場合を除くとされ、「消費者契約」は消費者と事業者との間の契約をいうからです(同法2条1項・3項)。そのため、保証の条件が厳しいことだけを理由に、条項が当然に無効になるわけではありません。契約の内容は当事者が法令の制限内で自由に決められる(民法521条2項)ので、保証の設計の良し悪しは、条文の中身と、勧誘の場面での説明との一致で決まります。相手方が個人で、消費者に当たる余地がある場合の注意は相手方が個人・開業前のときのページで説明しています。
以下では、事務所が作成・レビューした3つの書類を手がかりにします。マーケティングの仕組みの構築と運用を受託する契約(全50条・別紙3。構築完了の保証と、最初の成約までの無償延長を置いたもの)、会員制の事業者向けサービスの総合リーガルチェック(成果が基準に届かないときの差額返金を定めた条項を含むもの)、SNS運用コンサルの契約書のひな形(売上が基準に届かなければ延長し、それでも届かなければ半額を返金するもの)です。
何を保証するのか:4つの類型と、請負に近づけない書き方
保証の対象は、大きく4つに分けられます。どれを選ぶかで、受託者が負うリスクも、契約書に書くべき定義も変わります。
| 類型 | 約束する内容 | 書いておくべき定義 | 落とし穴 |
|---|---|---|---|
| 構築の完了 | 決めた期間内に、仕組みや環境が出来上がること | 「完了」の中身を別紙の項目と一対一で並べる。完了の確認の手続 | 完成の責任を負う契約、つまり請負に読まれる。準委任のまま保つ工夫が要る |
| 最初の成約 | 一定の期間内に、最初の成約が1件でも出ること | 「成約」「初成約」の定義。既存の顧客や申込みの経路を問うかどうか | 成約の有無を依頼する側が左右できる(自分で申込みを作る、報告しない) |
| 件数の達成 | 紹介や登録の件数が基準に届くこと | 件数の数え方、基準の根拠、期間の起算点 | 基準が高すぎて、実際には発動しない |
| 利益・売上の達成 | 利益や売上が基準に届かなければ、差額や一部を返すこと | 基準額、測定する期間と方法、データの出どころ | 外部の事情に左右される。返金額の上限と計算式がないと争いになる |
保証しない事項(広告の審査の通過、順位や露出、フォロワー数など)は、保証の条項とは別に、成果を保証しない条項の中で列挙しておきます。
構築の完了のように、仕事の完成に近い結果を保証するときに気をつけたいのは、契約の性質です。準委任では、受託者は結果ではなく、善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負います(民法644条・656条)。完成を約束する形にすると、請負(民法632条)に近づき、完成しなかったときの責任の理屈が変わります。コンサル契約の形については契約の形のページで説明していますが、保証を付けるときも、準委任であることは崩さないのが基本です。
マーケティングの仕組みの構築を受託した契約では、構築の完了を保証しながら準委任の枠を保つために、保証を「結果の約束」ではなく「措置」として書きました。受託者の責めに帰すべき事由で決めた期間内に完了しなかったときは、追加の報酬をもらわずに、完了するまで続ける、という約束です。そのうえで、この措置を遅れについての「唯一かつ排他的な責任」とし、依頼する側は遅れを理由に報酬の減額・返還、損害賠償の請求、契約の解除をしないと定めています。次の条文例は、その構造を要素に分けて書き直したものです。
条文例構築の完了と、遅れたときの措置(事務所の書式から要素を抜き出した形)
- 初期構築業務は、別紙に掲げる7つの項目の全部が提出され、委託者が閲覧し、及び利用することができる状態になったときに完了する。
- 受託者は、前項の完了をしたときは、各項目の所在を記載した完了の報告を電磁的方法により委託者に行う。委託者は、報告を受けた日から5営業日以内に、これを確認し、又は不足する項目を具体的に特定して受託者に通知する。この期間内に通知がないときは、初期構築業務は、期間の満了の時に完了したものとみなす。
- 受託者の責めに帰すべき事由により、サービス開始日から90日の初期構築期間内に初期構築業務が完了しなかったときは、受託者は、追加の報酬を請求することなく、完了するまでこれを継続して実施する。委託者の資料の提供の遅れその他委託者の責めに帰すべき事由により業務が妨げられた期間は、初期構築期間に算入しない。
- 前項の措置は、完了の遅れに関する受託者の唯一かつ排他的な責任とする。委託者は、遅れを理由として、報酬の減額若しくは返還の請求、損害賠償の請求又は契約の解除をすることができない。ただし、受託者に故意又は重大な過失がある場合は、この限りでない。
- 第3項の措置は、委託者が報酬及び費用の支払を遅滞なく履行していることを条件とする。第3項の継続実施の義務は、契約が終了した後も、完了するまでの間、存続する。
書き方の要点「完了」の判定を別紙の項目と一対一で結び付けること、委託者の確認の期限と「みなし完了」を置くこと、救済を措置に限りつつ故意・重過失を外すことの3点がこの条文例の要です。5営業日の確認期間は、報告を受けた側が黙っていても手続が止まらないようにする仕掛けです。
最初の成約を保証するときは、「成約」の定義が肝心です。マーケティング支援の契約では、「初成約」を、既存の顧客かどうか、申込みの経路が何かを問わない定義のまま維持しました。定義を狭くして、新規の顧客からの成約だけを数えるようにすると、保証が発動しにくくなり、広く取ると、発動しやすくなります。どちらが妥当かは、受託者がコントロールできる範囲(集客か、販売の導線か、商談の運用か)に応じて決めます。
発動の要件を並べる:条件の数と、数字の根拠と、抽象的な否認事由
保証は、条件が満たされて初めて発動します。事業者向けの会員制サービスの総合リーガルチェックでは、利益保証の条項について、発動の要件を整理し直しました。条項は「利益保証期間内に一定の条件を満たしたにもかかわらず成果が基準に届かなかった場合に差額を返金する」という読み方ができるもので、条件は、最初のセミナーの受講、指定のサポートの受講、月次の報告の提出、指定ツールの使用、登録件数が基準に届くこと、紹介料の累計が契約金額に満たないこと、不適切な運用がないこと、協議事項を守ることなど、多岐にわたっていました。報告書はこれを「完全履行型の保証」と呼び、実務上確実に機能する保証とは評価しにくいと結論しました。
| 着眼点 | 問題になる書き方 | 整え方 |
|---|---|---|
| 条件の数 | 受講、報告、ツールの使用、件数、協議の遵守など、条件が積み重なっている | 条件を保証の目的に結び付くものに絞り、各条件の充足を誰がどう確認するかを書く |
| 数字の妥当性 | 基準の件数が、地域、業種、規模の差を考えないまま固定されている | 基準の根拠と、実績のデータを契約前に示す。業種や規模で基準を変える欄を設ける |
| 抽象的な否認事由 | 「不適切な運用」など、成果が出ないこと自体が不適切と評価されうる言葉 | 具体的な事由に限り、通知と是正の期間を置き、否認の理由を説明する義務を付ける |
| 協議で決める構造 | 「協議の上定める」とされ、運用が提供する側の裁量に流れる | 協議で決める事項と、決まらないときの扱いを書く |
このうち最も争いになりやすいのが、保証を否認する理由の書き方です。上の契約には、「不適切な運用」があったときは保証を適用しないという定めがありましたが、何が不適切なのかは書かれていませんでした。これでは、成果が出なかった事実がそのまま「運用が不適切だった」と評価され、保証が使えない結果になりかねません。事務所は、依頼者の立場から、次のような修正案を示しました。
事務所の改訂例 保証を否認する事由の書き方(事業者向け会員制サービスの総合リーガルチェック)
「不適切な運用」の意味
なぜ否認の事由を重大な違反に絞り、通知と是正の機会を保証の否認の前に置くことで、成果が出ないことと運用の不適切さが同じものと扱われるのを防ぐため。
否認するときの説明
なぜ理由を示させることで、判断が恣意的になるのを防ぎ、後で争うときの資料も残るため。
発動の要件を条件として整理すると、民法130条の考え方が参考になります。条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその成就を妨げたときは、相手方はその条件が成就したものとみなすことができる(同条1項)とされています。保証を出す側が、保証を使わせないために、依頼する側の条件の充足を故意に邪魔した場合は、この規定の趣旨から、条件は成就したと主張する余地があります。ただし、争いになってから使える理屈であり、日々の運用で記録が残っていなければ、主張を支える材料がありません。反対に、同条2項は、条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は成就しなかったものとみなすことができるとしています。たとえば、初成約の保証で、依頼する側が関係者に申込みをさせて保証を回避しようとした場合に、受託者が拠り所にしうる考え方です。契約書では、関係者や自社による申込みを成約に数えるかどうかを、定義の中で先に決めておくほうが確実です。
数字の基準は、書く前に、受託者が現に達成できている範囲を確かめます。基準を高くしすぎた保証は、営業の言葉としては目立ちますが、実際に払う場面が少なく、払う場面では争いになります。「保証の適用の実績」を、契約前の資料として提示できるかどうかも、依頼する側が確認したいところです。報告書も、保証適用の実績、過去の返金の事例、保証を否認した理由の具体例を、契約前に確認することを勧めています。
資料の提供が遅れたとき:開始日と期間と保証の期限をずらす仕組み
保証には期限があります。期限を契約を結んだ日から数えると、依頼する側が資料を出さなかった期間も、保証の期間に入ってしまいます。受託者にとっては、動き出せない期間が保証の消化に使われる不利益があり、依頼する側にとっても、期限の起算点があいまいだと、いつまで保証が続くのかが分かりません。構築支援の契約では、保証の期限の起算点を次のように整えました。
開始日を確定させ、期間を連動させる流れ(構築支援の契約の例)
- サービス開始日の定義依頼する側が必要な資料とアカウントの権限の全部を渡し、受託者がその受領の完了を電磁的方法で確認した日の翌日をサービス開始日とする。分けて渡された場合は最後の日を基準とする。
- 期間を開始日からそろえる初期構築の期間(90日)、月次業務の開始、最低の契約期間(6か月)、保証の期限(6か月以内)を、すべてサービス開始日から数える。1か月ごとの区切りは応当日で定め、応当日がない月は月末で終える(民法143条2項の考え方)。
- 開始日が決まったら記録するサービス開始日が確定したら、各期間の始まりと終わり、支払期日を、電磁的方法で相互に確認して記録する。
- 依頼する側の遅れの扱い遅れた期間を初期構築期間に数えない。受託者はその事由を通知し、依頼する側が5営業日以内に異議を述べなければ、事由と期間に争いはないものとする。
- 30日を過ぎても揃わないとき契約を結んで30日を過ぎても提供が終わらない場合、受託者は、業務の停止、開始日の再設定、14日前の通知による解除のいずれかを選べる。
遅れた期間を後でまとめて主張すると、期間の認定が争いになります。事務所は、遅れが生じるたびに通知を出す運用が、条項を予定どおりに働かせるうえで大切だと説明しています。
保証の期限の起算日を「契約を結んだ日」にするか「サービス開始日」にするかは、決めておきたい論点です。構築支援の契約では、契約の締結から開始までに資料のやり取りの期間が挟まるため、サービス開始日を起算日にしました。あわせて、月額報酬は6回を上限とし、依頼する側の遅れで構築期間が延びても、それだけを理由に7回目以降の報酬は発生せず、更新した場合に限り発生する、と明記しました。遅れが保証や報酬の追加につながるのではないかという依頼する側の不安を除き、合意の範囲をはっきりさせるためです。
| 書き方 | 内容 | 働き方 |
|---|---|---|
| 契約を結んだ日から数える | 「契約の締結日から6か月以内」と書く | 資料の提供が遅れた期間も保証の期間に入ってしまう |
| サービス開始日から数える(構築支援の契約) | 「サービス開始日から6か月以内」と書き、サービス開始日を資料とアカウントの権限の受領完了の翌日と定義する | 資料の提供が遅れた期間は保証の期間に入らず、起算点が客観的な出来事に結び付く |
「公開」を要件にする保証では、依頼する側が承認や公開をしないことで、保証の条件が満たされないまま延長だけが発生するという抜け道が生まれがちです。構築支援の契約では、依頼する側が明示的な承認をしないために公開が遅れたときは、受託者は責任を負わず、そのサービス期間の公開の不足は「依頼する側が条件を満たさなかった」ものとして扱う、という接続の項を設けました。承認が行われないまま無償の延長だけが発生する経路を、この項で塞いでいます。
保証を失う手続を二段にする:通知と是正の機会、そして申出の期限
条件を満たさなければ保証を失う、という定めは、受託者を守るために必要です。ただ、条件のうちの一つでもたまたま満たせなかったときに、直ちに保証がなくなる書き方にすると、依頼する側は、細かい不履行を理由に保証を失うおそれがあり、受託者の側も、失権を主張して争いになるリスクを負います。次の3つの設計のうち、どこに置くかを決めます。
保証を失う場面の3つの設計
即失権型
条件を満たさない事態が生じたら、そのこと自体で保証が失われる
- 条文が単純で、受託者には使いやすい
- 依頼する側には酷で、運用の中で争いが増える
- 事業者間でも、信義則(民法1条2項)が問題になりうる
二段型
受託者が事態を具体的に特定して履行を求め、一定の期間(例:14日)内に是正されなかったときに限り、条件を満たさなかったものとする
- 依頼する側に是正の機会が与えられる
- 受託者の通知という行為を起点に動く
- 通知の記録がなければ、失権を主張できない
回数許容型
条件を満たさなかった期間が一つにとどまる限り、保証は維持し、二つ以上になったときに保証が生じない
- 軽微な遅れで保証を外さない
- 何回までなら許容するかは数字で書く
- 二段型と組み合わせると、運用が安定する
事務所の書類では、二段型に回数許容型を組み合わせました。
構築支援の契約の無償延長の条項は、この組合せで作られています。まず、条件の例として、決めた本数のコンテンツを公開したこと、資料を期限までに提供したこと、承認や修正の指示を期間内に行ったこと、撮影と編集を行ったこと、個別の相談を行って結果を共有したこと、数値を共有したこと、報酬と費用を遅滞なく支払ったことなどを並べています。条件を満たさない事態が起きても、それだけで直ちに権利は失われません。受託者が事態を具体的に特定して履行を求める通知をし、依頼する側が受け取った日から14日以内に是正しなかった場合に限り、そのサービス期間は条件を満たさなかったものとして扱われます。そして、そのように扱われる期間が二つ以上になったときに、はじめて無償の延長が生じなくなります。
| 書き方 | 読み方 | 働き方 |
|---|---|---|
| 「二を超える場合」 | 条件を満たさなかった期間が3つ以上になって初めて、無償の延長が生じなくなる | 二回までの遅れは許容される。軽微な遅れ一回だけを許す趣旨なら、緩すぎる |
| 「一を超える場合(すなわち二以上となる場合)」 | 条件を満たさなかった期間が二つ目になった時点で、無償の延長が生じなくなる | 一回程度の軽微な遅れで保証の対象から外さないという趣旨が、数字ではっきり読める。構築支援の契約はこの書き方 |
失権の手続には、通知の記録が欠かせません。意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる(民法97条1項)とされています。メッセージを送ったつもりで、相手方に届いたことが確認できなければ、14日の是正期間の起算ができません。契約書には、通知の方法(書面または電磁的方法)と、記録として残す運用を書いておきます。
延長を受ける側の手続にも期限があります。構築支援の契約では、無償の延長を求めるときは、契約期間の満了の日から14日以内に通知することとし、期間内に通知がなければ延長を求める権利を失うと定めました。あわせて、無償の延長の内容を、数値の分析、企画の改善の提案、既存の原稿の改善、月1回の会議などに限り、新たな構築、対象の追加、撮影や編集の代行、新規の原稿の制作は含まないとしています。保証の内容を限定しておかないと、「無償の延長」の名のもとに、有償の業務が際限なく追加されるからです。
無償の延長と、有償の自動更新が重なる問題も見落とせません。延長の期間に自動更新が働くと、依頼する側は、無償のはずの期間に月額報酬を請求されるおそれがあります。事務所は、延長を請求できる要件を満たした依頼する側が期限内に請求したときは、延長の期間について契約の更新も月額報酬も適用しない、有償で続けるのは別途の合意があった場合に限る、という項を新設しました。更新の止め方は中途解約・更新・精算のページでも扱っています。
条文例無償の延長の失権の手続(事務所の書式から要素を抜き出した形)
- 委託者が前項各号の条件のいずれかを満たさない事態が生じた場合であっても、そのことのみをもって直ちに、無償の延長を求める委託者の権利は失われない。
- 前項の場合において、受託者は、委託者に対し、書面又は電磁的方法により当該事態を具体的に特定した上でその履行を求める。委託者が当該通知を受けた日から14日以内にこれを是正しなかったときに限り、当該サービス期間について前項の条件が満たされなかったものとして取り扱う。
- 前項により条件が満たされなかったものとして取り扱われるサービス期間が一を超える場合には、無償の延長は生じない。条件が満たされているかどうかについて疑義が生じたときは、委託者と受託者が協議の上、これを定める。
- 委託者は、無償の延長を求めるときは、契約期間の満了の日から14日以内に、書面又は電磁的方法により受託者に通知する。当該期間内に通知がないときは、委託者は、当該延長を求める権利を失う。
- 無償の延長の期間については、契約の更新及び月額報酬の規定を適用しない。
書き方の要点通知を出す主体(受託者)、通知に書く内容(事態を特定すること)、是正の期間、失権の回数の4点を、項を分けて書いています。
差額返金・半額返金の計算:基準、期間、上限、時期、相殺
金額を返す保証は、計算が書かれていないと、保証が発動した瞬間に争いになります。SNS運用のコンサル契約書のひな形には、売上が一定額に上がらなかったときは、コンサルの期間を最大3か月延長し、延長しても届かなかったときはコンサル費の半額を返金する、という型の定めがあります。この型では、基準となる金額の欄が記入欄のままになっていることがあり、同じ条の中でコンサル費は契約を結んだ後は必ず支払うものとされ、免責の条には、利益や効果を保証したものではないと理解するという一文が別に置かれている、という並びも起こります。保証を約束する条項と、保証を否定する条項と、必ず払うという条項が同じ契約の中に並ぶと、読む側は、どの文が優先するのかを判断できません。
返金の保証を書くときは、次の項目を一つずつ埋めます。
| 項目 | 書くこと | 書かないと起きること |
|---|---|---|
| 基準 | 何をもって未達とするか(売上、利益、件数)。税込か税抜か、返品や取消しを引くか | 数字の読み方の違いで、発動するかどうかが分かれる |
| 測定の期間 | いつからいつまでの実績で判定するか。延長を挟むときは延長後の期間 | どの期間の数字で判断するのかが争いになる |
| データの出どころ | 依頼する側が報告するのか、受託者が確認できる画面や帳簿か。提出の期限 | 報告されないままの未達は判定できない |
| 返金額の算式と上限 | 例:返金額は、基準額から実績額を引いた差額とし、受領済みの報酬の額を上限とする。半額返金なら何の半額か | 返す金額が合意できず、保証が実行されない |
| 返金の時期と方法 | 判定後いつまでに、どの口座へ。振込の費用の負担 | 保証の発動後も、請求書のやり取りで時間がかかる |
| 相殺と未払金 | 未払いの報酬があるとき、返金額と相殺するか(民法505条・506条)。相殺の意思表示の方法 | 未払金と返金の関係が決まらず、双方が支払を止める |
| 他の請求との関係 | 返金を唯一の救済とするか。損害賠償や解除をどこまで排除するか。故意・重過失の例外 | 保証に加えて損害賠償も請求され、救済が二重になる |
| 保証後の契約の行方 | 返金後に契約が終了するのか、続くのか。続くなら報酬は | 返金後も報酬の請求が続く |
基準額と実績額の差額を返す「差額返金」では、算式を例えば次のように書きます。「返金額は、基準額から、判定の期間に生じた実績額を引いた額とし、委託者が受領済みの報酬の総額を上限とする」。基準額の欄に数字が入っていることが前提です。実績額を紹介料の累計とする契約では、紹介料の累計が契約金額に満たない場合、その差額を返金する、という算式になっていました。一方、半額返金は、「報酬の半額」ではなく、どの報酬の半額なのか(総額か、延長前の期間分か)を書かなければなりません。
返金の保証を付ける契約では、同時に、中途解約の精算の条項が厳しすぎないかも確かめます。総合リーガルチェックの対象は、2年の自動更新と3か月前の通知、中途解約時の未払金の全額の支払義務を置いており、保証の実効性が低い一方で解約の自由度も低い設計でした。報告書は、中途解約時の支払義務を残存期間の利用料の50%などの上限に抑える案を示しています。保証は、解約や更新の条項とセットで見なければ、全体の釣り合いが分かりません。
勧誘の説明と契約書を一致させる:事業者間でも残る問題
事業者間の契約では、保証の中身は契約書が決めますが、それを信じて契約した理由は、営業のときの説明にあります。パンフレットやランディングページ、面談で「結果が出なければ全額返金」と言い、契約書では条件が積み重なっている、という食い違いは、事業者間でも紛争の火種です。消費者契約法4条1項2号(将来の変動が不確実な事項についての断定的判断の提供による取消し)は消費者向けの規定なので、事業者間では使えません。しかし、事業者が相手でも、詐欺による意思表示は取り消すことができる(民法96条1項)とされており、事実と異なる説明を重ねれば、取消しや損害賠償の主張を受ける余地があります。また、契約書のひな形を不特定多数の相手に画一的に使っていて定型約款に当たる場合は、相手方の利益を一方的に害する条項が合意されなかったものとみなされることがあります(民法548条の2第2項)。
特定商取引法のうち、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売の規定は、営業のために、または営業として締結する契約には適用されません(同法26条1項1号)。ただし、相手方が個人で、実際には営業のためではない契約と評価される余地がある場合は、この適用除外の前提が崩れます。この点は、前述の相手方が個人・開業前のときのページで、事務所の確認条項と合わせて説明しています。
ヒヤリングの問い保証付きのコンサル契約を作るための問い
問営業資料やサイトで、保証をどう表示していますか。条件の記載はありますか。
理由営業の表示と契約書の条件がずれていないかを確かめます。条件を省いた表示は、契約の場面で最も争われます。
問保証の基準の数字は、過去の実績でいくつの顧客が達成していますか。
理由基準が実績に基づいているかを確かめます。実績がなければ、基準を低くするか、保証の対象を絞ります。
問保証を受けるために、依頼する側にしてもらうことは何ですか。それは記録できますか。
理由条件の数と、充足の確認方法を決めます。記録できない条件は、後で争いになります。
問保証が発動したとき、続きの業務をただで行うのか、金額を返すのか。どちらが現実的ですか。
理由措置型にするか、金銭型にするかを決めます。金銭型なら、算式と上限、時期を決めます。
問保証と、自動更新、中途解約、報酬の前払いの関係を整理していますか。
理由保証の期間と更新が重ならないか、保証が発動しても解約時の精算が重いままではないかを確認します。
問依頼する側が個人事業主や開業前の個人の場合、同じ契約書を使いますか。
理由消費者に当たる余地があるときは、事業者向けの契約書をそのまま使えません。
起きがちなことと、締結前に確かめること
保証付きのコンサル契約で起きがちなこと
- 営業の言葉は「必ず」「全額」なのに、契約書には条件が8つ並び、実際には一度も保証が発動しない。
- 「不適切な運用」のような抽象的な言葉で保証を否認できる書き方になっており、成果が出ないこと自体が否認の理由に読まれる。
- 保証の期限を契約の日から数えるため、依頼する側の資料が出ない期間も保証の期間に入ってしまい、受託者も依頼する側も不満が残る。
- 条件を満たさなかったとき、通知も是正の機会もなく直ちに保証を失うと定めたことで、運用中に細かい争いが増える。
- 無償の延長と有償の自動更新が同じ期間に重なり、無償のはずの期間に月額報酬を請求される。
- 返金の基準の欄が空欄のままで、半額返金の「半額」が何の半額か分からない。同じ契約の別の条には「保証しない」「必ず払う」と書いてある。
- 保証が成果を保証しない条項の例外であることが書かれておらず、条項どうしが矛盾している。
締結前に確かめること
- 保証の対象を、構築の完了、最初の成約、件数、利益のどれにするかを決め、定義語で特定した。
- 準委任の枠を保つため、保証を「措置」として書くか、金額の返還として書くかを決めた。
- 発動の要件は、数、根拠、確認の方法を書いた。抽象的な否認事由は具体的な違反に限り、通知と是正の期間を置いた。
- 保証の期限の起算点を、資料の受領完了などの客観的な出来事に置き、遅れた期間の扱いを決めた。
- 条件を満たさなかったときは、通知と是正の機会を経て、一定の回数に達したときに失う二段型にした。
- 無償の延長の内容を限定列挙し、有償の自動更新と重ならないようにした。
- 返金の算式、上限、時期、相殺を書き、保証と中途解約の精算の釣り合いを確認した。
- 営業資料や面談の説明を、契約書の条件と一致させた。
保証は、営業のうえでは強い言葉ですが、契約書の中では最も細かい約束です。受託者の側でも、依頼する側でも、「何をもって発動と呼ぶか」を数字と手続で書けるかどうかが、保証付きの契約の出来を決めます。成果を保証しない側の書き方は成果を保証しない条項のページ、成果に報酬を連動させる側の書き方は成功報酬のページに整理しています。契約の終わらせ方、つまり保証の途中で合意して契約を終えるときの覚書は、変更覚書と合意解除の覚書のページで説明しています。
本ページで引用した民法、消費者契約法、特定商取引法の条文は、e-Gov法令検索で2026年10月20日に確認しました。
よくあるご質問
成果保証や返金保証を付けると、準委任ではなく請負になりますか。
保証の書き方によります。結果そのものを約束し、完成しなければ報酬を請求できないという形にすると、請負(民法632条)に近づきます。受託者が善良な管理者の注意をもって事務を処理する準委任(民法644条・656条)の枠を保つには、結果の約束ではなく、結果が出なかったときの措置(完了するまで追加の報酬なしで続ける、一定期間無償で延長するなど)を約束する形が書きやすくなります。その措置を唯一の救済とし、故意・重過失を除くかどうかも合わせて決めます。
保証を付けるなら、成果を保証しない条項は要りませんか。
必要です。保証するのは契約書に書いた特定の結果だけで、それ以外の結果は保証しないはずだからです。保証の対象を定義して、それ以外(売上、利益、順位、フォロワー数など)は保証しない旨の条項を置き、二つの条項が矛盾しないように、保証が例外であることを書いておきます。同じ契約の別の条に保証を否定する条項が残っていると、どちらが優先するかが争いになります。
返金保証の条件が厳しいと、無効になりますか。
事業者どうしの契約では、条件が厳しいことだけを理由に当然に無効になるわけではありません。消費者契約法は原則として当てはまらず、契約の内容は当事者が法令の制限内で決められます(民法521条2項)。ただし、信義則(民法1条2項)に反する運用や、営業の説明と契約書の食い違い、定型約款に当たる場合の不当条項の扱い(民法548条の2第2項)が問題になりえます。条件が実際に達成できる水準かどうかは、無効かどうかとは別に、保証の価値を左右します。
無償の延長を使い切った後、有償で続けるにはどうしますか。
延長の期間は、契約の更新も月額報酬も適用しない期間とし、延長の後に有償で続けるのは、あらためて書面や電磁的方法で合意した場合に限る、と書くのが整理しやすい形です。自動更新が無償の期間に重なると、無償のはずの期間に報酬を請求できてしまうため、延長を請求できる要件を満たして期限内に請求したときは、更新を適用しないという項を置きます。
保証の条件を満たしたかどうかは、誰が判断しますか。
判断の主体と基準を契約書に書きます。受託者が一方的に判定する書き方は、行き過ぎると一方的だと評価されます。条件をデータや記録で確認できる形にし、疑義があるときは協議で定めるとするのが基本です。受託者が条件の不充足を主張するときは、事態を具体的に特定した通知と是正の期間を経ることを要件にすると、判断が恣意的になるのを防げます。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、業務の内容や当事者の属性、契約に至った経緯によって異なることがあります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきたコンサルティング契約書、顧問契約書、業務委託契約書、成果報酬・収益分配型の契約書、業務提携・共同事業の契約書、秘密保持契約書、PoCの覚書、各種の覚書、レビュー報告書、ヒヤリングシートなどを、個別の依頼者・相手方が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています(最終確認日:2026年10月20日)。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会 / 公正取引委員会 / 経済産業省