事業所を顧客にする月額の支援サービス:契約書の設計(障害福祉事業所の例)

事業所を顧客にして月額で支援を提供する契約は、事業所ごとに結び、料金プランを記載欄で確定させ、結果を保証せず、利用者の情報を受け取らない設計から組みます。

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料金表に複数のプランが載っているだけで、どのプランが適用されるのかが署名の書面から読めないと、後から争いになります。

このページの要点

  • 指定は事業所ごと。契約も事業所1施設ごとに結び、更新・解約・廃止や指定取消しへの備えも事業所ごとに書く。
  • トライアルから本契約へは、継続の合意の方法と、合意が得られなかったときの効果を書く。適用プランは署名欄の記載欄で確定する。
  • 広告・採用・イベント・工賃向上の約束と保証しないものを業務ごとに書く。工賃・利用者数・応募者数は保証しない。
  • 利用者の障害に関する情報は要配慮個人情報に当たりうる。受け取らない設計から始め、求人の「紹介」や集客の報酬の書き方も点検する。

結論:事業所を顧客にする支援サービスは、「事業所ごと」「段階料金」「保証しない」「利用者の情報を受け取らない」の4点で組む

このページは、障害福祉サービスの事業所を顧客にする支援サービスを例に説明します。ただし、4点の設計(施設ごとに契約を結ぶこと、トライアルから本契約への移行、料金プランの記載欄、結果の非保証)は、教室、店舗、クリニックなど、施設を単位にして運営する事業所を顧客にする月額の支援サービス一般に通じます。業種に固有の部分(事業所の指定、工賃、利用者の障害に関する情報)は、その旨を示して書き分けます。

障害福祉サービスの事業所(就労継続支援、放課後等デイサービスなど)を顧客にして、広告、採用、イベント、工賃向上などの支援を月額で提供する会社があります。顧客は福祉の事業者ですが、契約の相手方としては事業者ですから、消費者契約法の対象にはなりません(同法2条。事業として契約の当事者になる個人も「事業者」です)。民法と契約書の定めが、そのまま効く関係です。

このページは、制度の紹介ではなく、この種の支援サービスの契約書をどう設計するかを扱います。素材にしたのは、事務所が支援サービスの提供会社の側(受注者)から見てきた、広告・採用・イベント・工賃向上支援の業務委託契約書(料金プランの記載欄を加えた版を重ねたもの)と、秘密保持契約書です。設計の要点は4つです。

  1. 契約の単位:法人ではなく、事業所1施設ごとに結ぶ。更新と解約も施設ごとに考える。
  2. 料金:地域・施設の種類・申込みの時期で変わる段階的な料金プランを、契約書の記載欄に落とす。トライアルから本契約への移行は、合意の方法を書面に残す。
  3. 保証しない範囲:広告、採用、イベント、工賃向上のそれぞれで、何を約束し何を約束しないか。工賃や利用者数は保証しない。
  4. 利用者の情報:障害のある方の情報は要配慮個人情報に当たりうる。支援会社が受け取らない設計から始める。

報酬の型や中途解約の精算の一般論は、報酬設計のページと中途解約・更新・精算のページで扱っています。このページは、福祉の事業所を顧客にしたときに固有の論点に絞ります。

契約の単位は事業所:法人でなく施設ごとに結ぶ理由と、事業所の変化への備え

支援サービスの契約書の案には、「各契約は事業所1施設単位とする」という定めがありました。この単位の取り方には根拠があります。障害福祉サービス事業者の指定は、障害福祉サービスの種類と、サービスを行う事業所ごとに行われます(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下「総合支援法」といいます。)36条1項)。放課後等デイサービスなどの障害児通所支援も、児童福祉法に基づく指定が、種類と事業所ごとです(同法21条の5の15第1項)。同じ法人が複数の事業所を運営していても、サービスの種類、利用者、職員、売上は事業所ごとに違います。支援サービスの内容も効果も事業所ごとに違うのが自然です。

契約の単位の3つの組み方

法人と1本

法人が運営する全事業所をまとめて1本の契約にする

  • 契約の手続は簡単
  • 事業所を足したり閉めたりするたびに契約の変更が要る
  • 料金プランや更新時期が事業所ごとに違うと書ききれない

事業所ごとに1本

施設ごとに独立の契約を結ぶ

  • 料金、期間、解約を事業所ごとに管理できる
  • 事業所が増えるたびに契約書の締結が要る
  • 案はこの型。更新の通知も事業所ごとに必要

基本契約+個別の申込み

法人と基本契約を結び、事業所ごとに申込書でプランと期間を決める

  • 共通の条件は一度で済み、事業所は申込書で足せる
  • 基本契約と申込書の優先関係を決める必要がある
  • 個別の申込書は料金・期間・適用地域の記載欄を持つ

どの型でも、契約の相手方(法人か、施設の運営者か)と、料金を払う主体を契約書の冒頭で特定しておきます。

案の契約期間は2年で、満了の3か月前までにいずれかの当事者から書面(電子メールを含む)による終了の意思表示がない限り、同一条件で2年自動更新される形でした。更新の止め方は中途解約・更新・精算のページで扱っています。ここで補足したいのは、2年の自動更新は通知を逃すと次の2年に入るため、事業所ごとの更新日を管理できる仕組みと、更新前に内容の見直しを協議する努力義務(案にあった定め)を組み合わせておくことです。

事業所の側の事情による変化にも備えます。指定は6年ごとの更新を受けなければ効力を失い(総合支援法41条1項、児童福祉法21条の5の16第1項)、事業を廃止・休止しようとするときは、その1か月前までに都道府県知事に届け出ます(総合支援法46条2項、児童福祉法21条の5の20第4項)。指定の取消しや効力の停止もありえます(総合支援法50条、児童福祉法21条の5の24)。契約書の案は、「事業所の閉鎖、廃止、又は指定の取り消し等により、業務継続が不可能となったとき」を中途解約の事由とし、少なくとも3か月前までに書面で通知するとしていました。

事業所の変化と契約書の手当て
事業所の変化契約書に書くことずれやすい点
廃止・休止廃止・休止を決めたら、速やかに支援会社へ通知する義務。解約の効力発生日と、残りの期間の料金の扱い廃止の届出は1か月前まで。契約の予告が3か月前だと、廃止の決定から終了まで予告の期間が足りないことがある。事由が生じたときの予告は短くする
指定の取消し・効力の停止通知義務と、停止期間中の料金の扱い(停止するか、減額するか)停止が終わったあとにサービスを再開するかどうかが決まらない
運営者の変更(事業の承継など)契約上の地位の承継に支援会社の承諾を要するか。承継先に引き継ぐ条件運営者が変わっても、前の運営者の名義で請求が続く
所在地・施設の種類の変更対象地域のプランが変わるか、変更のとき差額を精算するか地域プランの前提が崩れたのに、料金が従前のまま

トライアルから本契約へ:移行の合意を書面に残す

この種の支援サービスでは、いきなり2年の契約を結ぶのではなく、最初の数か月をトライアルとして始める運用が見られます。案の契約書も、版を重ねる中で、この部分の書き方が変わっていきました。

事務所の改訂例 契約期間とトライアルの定め(障害福祉サービス事業所向けの支援サービスの業務委託契約書)

契約期間の始まり

改訂前当初の案:契約期間は、契約締結日から起算して2年間とする。
改訂後改訂後:契約期間は原則として締結日から2年間。締結日が1月から3月までの間にあるときは、締結日から3月末までを初年度の期間とし、翌4月1日から2年間とする。

なぜ年度の区切りで契約を数えたい支援会社の事情に合わせ、年度の途中で結んだ場合の端数の期間を初年度として切り出した。

初年度の期間をトライアルにする

改訂前初年度の期間を切り出すだけの書き方:締結日から3月末までを初年度の期間とし、翌4月1日から2年間とする。
改訂後改訂後:締結日が1月から3月までの間にあるときは、3月末までの約3か月間をトライアルの期間とし、その間に継続の可否を協議する。継続する場合に、4月1日から2年間の契約が有効に成立し、継続の合意は書面または電子メールで行う。合意が得られなければ、3月末をもって終了する。

なぜ初年度の期間を切り出すだけでは、2年の契約が始まったのか試用なのかが読み分けにくい場合がある。試用の期間と本契約の成立を分け、成立の要件に「継続の合意」を置いた。

無料の期間

改訂前当初の案:定めなし。
改訂後改訂後:経営状況や利用者数などから支援会社が特に認めた場合に限り、1年間を無償提供の期間とすることができる。適用を受けた事業所は、無料期間のあとの2年間の契約を継続することを条件とし、適用は個別の合意(書面または電子メール)で明確にする。

なぜ無料にするのは、あとの継続を前提にした例外であることを条文に残した。無料にする基準を支援会社の裁量に置き、個別の合意で確定させる。

設計として検討したい点が4つあります。

  1. 合意が得られなかったときの効果を書く。案には、「合意が得られなかった場合は、3月末をもって終了する」とあります。協議が不調の場合のデフォルトが「終了」なのか「本契約に移行」なのかが決まっていないと、トライアルの最後の日に、契約が続いているのか終わったのかが争われます。
  2. トライアルの間の費用と業務の範囲を決める。トライアルの間の月額を低くする設計では、その間の業務の内容が本契約と同じか、縮小されるのかを書きます。
  3. トライアルの中での終了を決める。中途解約を原則として認めない契約(案の定め)では、トライアルの間に事業所が「合わない」と判断したとき、どう終えるのかが空白になります。トライアルの間は協議の上、終了できると書くと、協議が不調なら終了という流れと整合します。
  4. 日付の固定に注意する。本文に特定の年月日を書き込むと、締結が書かれた日付より遅れたとき、トライアルの始まりが締結前に遡ってしまいます。年度の途中で結ぶ事業所が出ることを前提に、始期は「締結日」を基準にし、年月日は申込書の記載欄に出します。

トライアルの終わりの3つの設計

自動で本契約に移る

事業所が申し出ない限り、本契約になる

  • 事業所に「やめる」と言う負担が生じる
  • 断りにくい関係では事実上の強制になる
  • 通知の期限と方法を明確にしておく

合意があって初めて本契約になる(案の型)

書面または電子メールの合意がなければ終了

  • 事業所にとって安全
  • 合意の記録を残す運用が要る
  • 合意が遅れた日の業務を続けるかを決めておく

事業所が選択する

トライアルの終わりに、事業所が本契約か終了かを選ぶ

  • 事業所の意思が明確に残る
  • 支援会社は選択を待つ間の業務が不安定
  • 選択の期限と、期限までに選択がなかった場合の扱いを決める

料金プランを契約書に落とす:地域・施設の種類・申込みの時期・年度の段階

この種の契約書では、料金が一つの金額ではありません。案の契約書の料金表は、申込みの時期(早い申込みの特別な単価かどうか)、事業所が支援会社のサービス対象地域にあるかどうか、施設の種類(就労支援系か、児童発達支援・放課後等デイサービス系か)の組み合わせでプランが分かれ、それぞれのプランの月額が年度ごとに段階的に上がる形でした。変数を整理すると次のとおりです。

料金を決める変数と、契約書に書く場所
変数契約書に書く場所空白・曖昧だと起きること
施設の種類対象施設の種類を列挙し、その他は支援会社が認めたものとする「その他」の施設が、どのプランの表に入るのかが決まらない
所在地(サービス対象地域か)対象地域を市区町村の名称で定義する。変更の手続も書く合併や所在地の変更で地域が変わったとき、どのプランが適用されるのか分からない
申込みの時期早い申込みの特別な単価の条件(いつまでの申込みか)を表に書く申込みの日と契約の締結日が違うとき、どちらで判断するか争いになる
年度ごとの段階各年度の月額を表に書く。更新後の単価も書く更新後の2年間も同じ金額か、表のどの段に当たるかが読めない

案のもとの版(依頼者の当初の案)では、プランの適用を「申込時点の時期、乙の所在地および施設種別に基づき、甲が判断する」とし、料金表は本文にまとめて載せていました。これだと、事業所と締結した時点で、どのプランが適用されるのかが契約書から読めません。事務所の書類では、署名欄に「契約プラン」「適用期間」「月額利用料」の記載欄を加え、事業所ごとに適用するプランを確定させる形にしました。

事務所の改訂例 料金プランの確定と金額の表示(当初の案と改訂後)

適用するプランの確定

改訂前当初の案:料金表に複数のプランを載せ、適用は支援会社が判断する。署名欄は、事業所の住所・名称・代表者のみ。
改訂後改訂後:署名欄に、契約プラン・適用期間・月額利用料の記載欄を設け、事業所ごとの適用を契約の時点で確定させる。

なぜプランの適用を支援会社の判断に任せたままだと、あとから「別のプランだった」という争いが残る。確定した内容を署名と同じ書面に残す。

金額の表示

改訂前当初の案:料金表の見出しが「税込」。
改訂後改訂後:料金表のすべての見出しを「税別」に改めた。

なぜ金額が税込か税別かで請求の総額が変わるため、表の見出しに明記する。

支払の方法は、毎月末締め・翌月末払いが基本で、希望に応じて半年払いまたは年払いを選べる形でした。支払方法は振込(請求書払い)または口座振替で、事前協議の上で決めます。半年払い・年払いを選べるなら、中途解約のときの精算が論点になります。案の中途解約の定めは、原則として契約期間中の解約を認めず、事業所の閉鎖などの事由があるときは3か月前の書面による通知で解約でき、事業所が自己都合で解約したいときは、支援会社の承諾を得たうえで、契約の残りの期間の利用料の50%相当額を違約金として支払う形でした。

違約金は、民法上は賠償額の予定と推定されます(民法420条3項)。事業者どうしの契約では、消費者契約法の平均的な損害の規制は働かず、合意が尊重されるのが原則です。ただし、前払いの利用料の未経過分を返すのか、返したうえで違約金を請求するのか、返さないことで違約金に代えるのかを決めておかないと、半年払いや年払いのとき、違約金と前払い分の関係が二重取りに見える計算になります。この整理の仕方は中途解約・更新・精算のページの「違約金の計算が破綻しない書き方と二重取りの排除」で扱っています。

支払が遅れたときの遅延損害金は、年率を契約書に書いておきます(書かない場合は法定利率によります。民法404条)。契約期間中の料金の改定は、法令の改正などやむを得ない事情があるとき、事前の通知と協議を経て合理的な範囲で改定できるという形が案にありました。顧問料・月額料金の改定の手続は報酬設計のページで整理しています。

広告・採用・イベント・工賃向上の範囲と、工賃・利用者数を保証しない書き方

案の契約書は、支援の内容を4つの業務に分けていました。業務ごとに、約束するもの、保証しないもの、決めておくことを整理します。

4つの業務の約束と保証しないもの
業務契約書の約束保証しないもの決めておくこと
広告支援支援会社の公式LINEとSNSで、事業所の情報を月1回以上、適した形式で配信する。原稿案の作成や画像編集の支援を行うことがある閲覧数、問い合わせ件数、利用者数の増加最低の配信回数。原稿は事業所が最終的に確認すること。掲載内容の正確さの責任の分担。利用者が写る素材の扱い
採用支援事業所の求人情報を、支援会社が持つネットワークや媒体で配信する。求人票の記載の助言を行う応募者数、採用数(案にも人材供給の成果を保証しない旨がある)「応募者の紹介」を業務に含めるかどうか(次の章)
イベント企画・運営支援支援会社が主催・共催する地域のイベントへの参加の機会を提供し、事業所の企画によるイベントの企画・広報・運営を支援する来場者数、販売の売上開催の頻度や規模は都度協議と決めたうえで、協議の費用負担、日程、中止のときの扱い
工賃向上支援支援会社が得た清掃、軽作業、組立・梱包などの業務について、作業委託の斡旋・紹介を行う。事業所の製品の名称・デザイン・価格のブランディング支援、流通先の開拓に関する助言を行う工賃の水準、仕事の量、製品の売上斡旋した作業の契約の当事者、品質・納期・代金の責任、支援会社の取り分の有無

案では、採用支援の項に「人材供給の成果を保証するものではない」という定めがあり、工賃向上支援には「支援は甲の裁量により内容・頻度を調整することがある」という定めがありました。工賃や利用者数、売上といった結果を保証しないことを、契約書の全体にかかる定めとして置くかどうかが、設計の要点です。

条文例成果を保証しない定め

  1. 甲は、本業務について、乙の利用者数、乙が利用者に支払う工賃の水準、乙の売上、求人への応募者数または採用数、イベントの来場者数その他の結果を保証しない。
  2. 甲が示す目標値、過去の実績および試算は参考であり、甲が当該結果を約束するものではない。
  3. 甲が行う作業委託の斡旋・紹介は、甲が得た業務を乙に紹介するものにとどまる。乙が紹介された業務を受けるか否かは乙が決定し、受けた場合の品質、納期および対価については、乙と当該業務の発注者との間の契約による。
  4. 乙は、利用者の工賃の目標水準の設定、利用者への通知その他の運営上の義務を、自らの責任で行う。

書き方の要点第2項は、勧誘のときの資料や過去の実績が約束と読まれないようにするものです。第4項の背景は次の段落で説明します。

第4項の背景には、指定就労継続支援B型事業者に課される運営上の義務があります。厚生労働省令(指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準。以下「運営基準」といいます。)は、B型の事業者に、生産活動に係る事業の収入から必要な経費を控除した額を工賃として支払うこと、工賃の水準を高めるよう努めること、年度ごとに工賃の目標水準を設定して利用者に通知し都道府県に報告することを求めています(同基準201条)。工賃の水準を高める責任は事業所自身にあり、支援会社が肩代わりするものではありません。支援会社が作業の斡旋で取り分を設ける場合は、その取り分が事業所の会計でどう扱われ、工賃の計算にどう影響しうるかを、事業所の側で確認できるように、取り分の有無と算定方法を契約書に書いておくと、後の争いが避けられます。

保証しない旨を契約書に書いても、契約の外の説明が約束と受け取られれば、条項だけでは消せません。この点は成果を保証しない条項のページの「契約書の外の説明は、条項では消せない」で扱っています。パンフレットや営業資料、イベントでの説明に「工賃が上がる」「応募が増える」と書かない運用と、契約書の定めを一致させる必要があります。

制作物と知見の扱いも、事業所を顧客にする契約では見落とされやすい点です。案では、支援会社が作成・提供した広告物、記事、画像、動画、投稿文その他の著作物の知的財産権は支援会社に帰属し、事業所には広報・販促・説明の目的に限り、自身の媒体で無償・非独占の使用を許諾する形でした。ブランディング支援で作った製品の名称やデザインを、契約が終わったあとも事業所が使い続けられるのかは、工賃向上の観点では特に重要です。支援会社が作ったものの権利は支援会社に残すとしても、契約終了後の使用の可否と範囲を、製品の名称・パッケージについて個別に書いておきます。このあたりの権利の分け方は成果物・ノウハウ・知的財産のページに3つの型として整理しています。

案には、支援会社が持つ業務手法、運営ノウハウ、営業戦略、システム構成などを模倣・再現してはならないとする禁止事項があり、その対象は、契約の対象業務に限らず、支援会社が独自に展開する他の事業領域のノウハウにも及ぶ書き方でした。有効期間は契約終了後5年です。範囲が広い禁止は、事業所の事業の自由を過度に制限するものとして、民法90条により効力が争われる余地があります。対象を、本業務で支援会社が提供した資料や手法に絞り、期間と例外(公知の情報、事業所が独自に開発したもの)を書くほうが、守りたいものを守りやすくなります。

人材と利用者の紹介に対価が絡むとき:職業紹介と利益供与等の禁止

支援会社の仕事には、事業所に人や利用者をつなぐ場面が含まれます。契約書の書き方によっては、別の法令の規律を呼び込みます。

一つは、採用支援です。案の採用支援は、事業所から依頼のあった求人内容に基づいて求人情報を配信し、求人票の記載を助言し、応募者の紹介を行うことがあるとしていました。この紹介は対価を原則として受けない扱いです。職業安定法は、求人と求職の申込みを受けて、求人者と求職者の間の雇用関係の成立をあっせんすることを「職業紹介」と定義しています(同法4条1項)。対価を受けない無料の職業紹介も、一定の場合を除いて許可が必要です(同法33条1項)。求人情報を掲載・配信すること、求人票の書き方を助言することは、直ちにこの定義に当たるわけではありませんが、「応募者を紹介する」「あっせんする」という書き方で、応募者と事業所の間に入って雇用の成立を取り持つ運用を契約に入れると、職業紹介に当たるかどうかという問題を呼び込みます。契約書では、支援会社の業務を「求人情報の配信と求人票の記載の助言」にとどめ、応募者とのやり取りは事業所が直接行うと線を引くのが、契約書の設計としては簡明です。許可の手続そのものは、このページの対象外です。

もう一つは、利用者の紹介に関わる対価です。運営基準は、事業者が、利用者やその家族に対して自分の事業所を紹介することの対償として、相談支援事業を行う者、他の障害福祉サービスの事業を行う者等やその従業者に、金品その他の財産上の利益を供与してはならず、収受してもならないと定めています(運営基準36条・38条を、就労継続支援A型は197条、B型は202条で準用。放課後等デイサービスは、児童福祉法に基づく指定通所支援の運営基準47条・49条を71条で準用)。規定の相手方は、相談支援事業者や他の福祉サービスの事業者などで、広告会社そのものは挙げられていません。しかし、支援会社が自ら福祉サービスの事業を営んでいる場合は、相手方に当たりうるため、確認が必要です。契約書の設計では、集客の支援を、月額の定額や配信の回数に対する対価にとどめ、利用者の紹介の件数に連動する報酬にしないこと、「紹介料」と読める名目を避けることが、安全な方向です。

紹介に関わる業務の書き方
業務避けたい書き方契約書での線の引き方
求人の支援応募者を紹介する、採用をあっせんする、紹介の成果に応じた報酬求人情報の配信と、求人票の記載の助言。応募者との連絡と面接は事業所が直接行う。報酬は配信の対価とし、採用の人数に連動させない
集客の支援利用者の紹介の件数に応じた報酬広告の配信回数や掲載の対価として月額の定額とする。利用者との契約は事業所が直接結ぶ
作業の斡旋斡旋した作業の対価の一部を、取り分として当然に受ける斡旋の有無と取り分の有無を契約書に明記する。取り分を置く場合は、算定方法と、事業所の会計に与える影響を事業所が確認できる形にする

契約終了後に残る取引の扱いも、紹介と対価の線に関わります。案には、支援会社を通じて始まった取引や提携、イベントなどが契約期間の終了後も続くときは、原則として本サービス(本契約)を継続利用する、という一文の特約を置いた版がありました。この書き方は、継続利用の対象(月額の支援全体か、斡旋した取引だけか)、期間、対価がいずれも読み取れません。終了後の取引の扱いは、①終了と同時に関係を終える、②継続中の取引について一定の期間、取り分または料金を定める、③継続利用を義務づける、のどれかを選んで、対象と対価を書く必要があります。

利用者の情報:要配慮個人情報に当たりうるため、受け取らない設計から始める

事業所の顧客は、障害のある方やそのご家族です。事業所を支援する会社が、広告や採用、作業の斡旋の中で、利用者の情報に触れる場面はあります。利用者の写真を広報に使う、作業の斡旋のために利用者の特性を伝える、イベントに利用者が参加する、といった場面です。

個人情報保護法は、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴などのほか、不当な差別、偏見その他の不利益が生じないように取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報を「要配慮個人情報」としています(同法2条3項)。政令は、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の個人情報保護委員会規則で定める心身の機能の障害があることを挙げています(同法施行令2条1号)。規則は、身体障害者福祉法の別表に掲げる身体上の障害、知的障害者福祉法にいう知的障害、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律にいう精神障害(発達障害を含む)、治療方法が確立していない疾病などで総合支援法4条1項の政令が定めるものによる障害の程度が一定のものを挙げています(同法施行規則5条)。障害福祉サービスの利用者の多くが、これに当たりうることになります。利用の事実から障害があることが推知できる情報も、要配慮個人情報として扱う前提で設計するのが安全です。

要配慮個人情報は、取得にあらかじめ本人の同意が必要で(同法20条2項)、本人の求めに応じて第三者への提供を停止することを条件に本人の同意なく提供できる仕組み(オプトアウト)でも、提供できません(同法27条2項ただし書)。事業所の側でも、運営基準が、従業者と管理者に、業務上知り得た利用者やその家族の秘密を漏らさないことを求めています(運営基準36条を、A型は197条、B型は202条で準用。放課後等デイサービスは児童福祉法に基づく指定通所支援の運営基準47条を71条で準用)。

契約書の設計は、利用者の情報にどこまで触れるかで4つの段階に分けて考えると整理できます。

利用者の情報の4つの段階

受け取らない

事業所単位の数値、匿名の統計のみ

  • 支援会社は個人情報を持たない
  • 契約書に「利用者の個人情報は提供しない」と書く
  • 広告・採用・イベントの大半はこの範囲で足りる

識別できない形で受ける

氏名などを除いた情報(仮名など)

  • 復元できる形で渡さない
  • 再識別の禁止を書く
  • 作業の斡旋の相談はここで足りることが多い

個人データを受ける

事業所の委託として、個人データの取扱いを任される

  • 委託に伴う提供として、事業所に監督の義務が生じる(法25条、27条5項1号)
  • 目的、再委託の禁止、返還・消去、漏えい時の通知を書く
  • 要配慮個人情報は、事業所が本人の同意を得ていることを確認する

写真・声・氏名を公開する

広報、イベント、製品の紹介に利用者が登場する

  • 本人(児童の場合は保護者)の同意を、事業所が取る
  • 公開の媒体・期間・撤回の方法を決める
  • 同意の範囲を超えた使用を支援会社がしない

支援会社は、第1段階(受け取らない)を契約書の原則にし、第2段階以上に進むときは、事前に書面で範囲を決める、という順序にするのが堅い設計です。

契約書の条項としては、次の要素を入れます。

  • 利用者の個人情報は、原則として支援会社に提供しない。提供する場合は、事前に書面で提供の範囲と目的を特定する。
  • 提供する情報について、事業所が本人(または保護者)の同意その他の適法な根拠を得ていることの確認。
  • 目的外の利用の禁止、再委託の禁止または事前の承諾、漏えいのときの直ちの通知、契約終了時の返還・消去と報告。
  • 外国の事業者が提供するクラウドや生成AIへの入力は、事業所の事前の承諾を要する(個人情報保護法28条の問題があるため)。
  • 広報素材に利用者が写るときは、同意書の保管と、同意の範囲を超えない使用を支援会社が約束すること。
  • 事業所の運営情報(利用者数、売上、請求の内容など)を秘密情報として扱う秘密保持の定め。

個人データを預かる側の定め方や、生成AIへの入力の区分は秘密保持・個人情報・生成AIのページで、秘密保持契約を単独で結ぶときの論点は秘密保持契約書(NDA)のページで扱っています。秘密保持契約書の中の個人情報の条に法令名を並べる場合は、現行の法令の名称と条番号に合っているかを確かめます。たとえば「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」は、2021年の法改正により、国の行政機関等の個人情報の取扱いが個人情報保護法に統合され、2022年4月1日に廃止されています。旧法の名称を並べても、今の規律の説明にはなりません。

事務所が最初に確かめることと、起きがちなこと

ヒヤリングの問い障害福祉サービス事業所向けの支援サービスの契約

  • 問支援の相手は、法人ですか、事業所ですか。事業所はいくつありますか。

    理由契約の単位と、プランの適用、更新の管理の方法を決めるため。

  • 問事業所の種類(就労継続支援、児童発達支援、放課後等デイサービスなど)と、所在地の市区町村を教えてください。

    理由料金プランの変数(施設の種類と対象地域)を確定させるため。

  • 問トライアルの期間と、その間の月額、業務の内容は本契約と同じですか。

    理由トライアルから本契約への移行の合意の方法と、トライアル中の終了を決めるため。

  • 問広告・採用・イベント・工賃向上のうち、実際に提供する業務はどれですか。結果の目標値は営業資料に載せていますか。

    理由保証しない範囲と、契約の外の説明の整合を確かめるため。

  • 問求人の支援で、応募者とやり取りをする場面はありますか。支援会社は福祉サービスの事業も営んでいますか。

    理由職業紹介に当たる運用と、利益供与等の禁止の相手方に当たる立場かどうかを確かめるため。

  • 問利用者の氏名、写真、障害の内容などに、支援会社が触れる場面はありますか。同意はだれが、どう取っていますか。

    理由利用者の情報の4つの段階のどこまで進むかと、同意の確認の方法を決めるため。

  • 問支援を通じて始まった取引が、契約の終了後も続くことはありますか。

    理由終了後に残る取引の対象と対価を決めるため。

障害福祉サービス事業所向けの支援サービスで起きがちなこと

  • 料金表に複数のプランが載っているだけで、どのプランが適用されるのかが署名のときの書面から読めない。
  • トライアルの最後の日までに合意が取れず、契約が続いているのか終わったのかが分からない。
  • 事業所が廃止を決めたが、契約の予告が3か月前なので、廃止の届出の日までに解約の効力が生じない。
  • 営業資料の「工賃が上がります」という説明が、契約書の「保証しない」旨の定めと食い違う。
  • 求人の「応募者の紹介」を業務に書いたまま、職業紹介に当たるかどうかを点検していない。
  • 支援を通じて始まった取引が契約終了後も続くとき、継続利用の対象と対価が決まっていない。
  • 広報用に利用者の写真を受け取ったが、本人や保護者の同意の範囲を超えて使ってしまう。
  • 秘密保持契約書の個人情報の条に、廃止された法律の名称が並んでいる。

これらの論点は、福祉の事業所だから特別というより、事業所を顧客にして月額で支援を提供する契約の設計を、事業所ごとの指定、料金の段階、結果の非保証、利用者の情報という福祉の事業に固有の事情に合わせて細かくしたものです。契約の形の基本はコンサルティング契約書の「形」のページで、業務の範囲の線引きは業務範囲と顧問の範囲のページで確認できます。

本ページで引用した障害者総合支援法、児童福祉法、指定障害福祉サービス等と指定通所支援の運営基準(厚生労働省令)、職業安定法、個人情報保護法とその施行令・施行規則、民法、消費者契約法の条文は、e-Gov法令検索で2026年10月20日に確認しました。

よくあるご質問

障害福祉サービスの事業所を顧客にする支援サービスの契約は、法人単位と事業所単位のどちらで結びますか?

事業所単位で結ぶのが基本です。障害福祉サービス事業者の指定は、サービスの種類と事業所ごとに行われます(障害者総合支援法36条1項、児童福祉法21条の5の15第1項)。サービスの内容も料金も、利用者も事業所ごとに違うため、更新、解約、料金プランも事業所ごとに管理できる形にします。複数の事業所があるなら、基本契約を法人と結び、事業所ごとの申込書でプランと期間を決める方法もあります。

トライアル期間のあとの本契約への移行は、どう書けばよいですか?

トライアル期間の長さ、その間の月額と業務の範囲、継続の合意の方法(書面または電子メール)、合意が得られなかったときの効果(終了なのか、本契約に移行なのか)、トライアル中の終了の手続を書きます。本文に特定の年月日を書き込むと、締結が遅れたときに始期が遡るため、始期は締結日を基準にして、年月日は申込書の記載欄に出します。

工賃や利用者数を保証しないと、契約書にどう書けばよいですか?

工賃の水準、利用者数、売上、応募者数、来場者数などの結果を保証しないと明記し、示した目標値や過去の実績は参考であって約束ではないと書きます。作業の斡旋は仕事の紹介にとどまり、品質・納期・対価は事業所と発注者の契約によるとします。契約の外の営業資料や説明が約束と読まれないよう、資料の表現も合わせます。

利用者の情報を、支援サービスの提供会社が受け取ってもよいですか?

障害があることは、個人情報保護法の要配慮個人情報に当たりえます(同法2条3項、施行令2条1号、施行規則5条)。取得にはあらかじめ本人の同意が必要です(同法20条2項)。契約書では、利用者の個人情報は原則として提供しない、提供する場合は事前に書面で範囲と目的を決め、事業所が同意を得ていることを確認する、再委託の禁止、返還・消去、漏えい時の通知を定めるのが堅い設計です。

求人の支援で「応募者の紹介」を業務に書くと、問題になりますか?

職業安定法は、求人と求職の申込みを受けて雇用関係の成立をあっせんすることを職業紹介と定義し(4条1項)、無料でも許可が必要になる場合があります(33条1項)。求人情報の配信や求人票の記載の助言は直ちに該当しませんが、応募者との間に入ってあっせんする書き方をすると、問題を呼び込みます。契約書では、支援会社の業務を求人情報の配信と記載の助言にとどめ、応募者とのやり取りは事業所が直接行うと線を引きます。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、業務の内容や当事者の属性、契約に至った経緯によって異なることがあります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきたコンサルティング契約書、顧問契約書、業務委託契約書、成果報酬・収益分配型の契約書、業務提携・共同事業の契約書、秘密保持契約書、PoCの覚書、各種の覚書、レビュー報告書、ヒヤリングシートなどを、個別の依頼者・相手方が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています(最終確認日:2026年10月20日)。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会 / 公正取引委員会 / 経済産業省

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